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ダタッツ剣風 〜悪の勇者と奴隷の姫騎士〜
第一章 邂逅のブロンズソード
第11話 離れていく心
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「そうだ! どこにも属してないってなら、今から王国の騎士団に入ったらどうよ! ダタッツ君の腕なら、間違いなくトップエースだぜ!」
「う、うん、そうだよ! それ、すっごくいいと思うな!」
「……その時はハンナ、差し入れで胃袋掴んでやりな」
「だっ……だからそう言うのじゃないってばぁあ!」

 帝国出身だとしても、今からなら。傷付けあっていない今なら。
 王国人として、彼を迎え入れたい。騒ぎ立てる彼ら二人の、そんな想いが目に見えるようだった。

「……」

 しかし。
 ダタッツはその想いに応える素振りを見せず、再び目を伏せる。彼らの気持ちを知ってなお。
 ――否。知ったからこそ、目を伏せたのだ。

「……そうか。そう言うことだったのか。ようやく合点が行ったぞ! バルスレイッ!」
「……なに?」

 すると――縛り上げられ、意気消沈していたババルオが突如怒号を上げる。禿げ上がった頭に浮き出た血管が、その興奮の凄まじさを物語っていた。
 その唐突な変貌に、バルスレイは眉を顰める。この醜男が今更暴れ出したことへの呆れが、表情に現れているようだった。
 そんな政敵の顔色に構わず、ババルオは唾を飛ばして声を荒げる。精一杯の鬱憤を、ぶつけるかのように。

「貴様……初めから儂を失脚させることが目的で、今まで泳がせていたのだなッ……! この街の娘達を、生贄にして!」
「何を言い出すのかと思えば。どう解釈しようと貴様の勝手だが、我々は帝国貴族の尊厳のために貴様を裁いたに過ぎん。タネを蒔いたのは貴様だ」

「――そうやって儂の地位を奪うのが狙いだったのか……! 死んだと見せかけた『帝国勇者』を利用してッ!」

 帝国勇者。

 その一言が飛び出した瞬間。

「帝国、勇者……!?」
「帝国勇者って……あの、六年前の戦争で王国軍を蹂躙したっていう……」
「あの、帝国勇者……!?」

 この場にいる人間全てが――凍り付いた。
 喜びの渦は消え去り、氷原が広がるように辺りは静まり返る。誰もが、ババルオの言葉に耳を奪われていた。

「貴様ッ……!」
「帝国勇者に剣を教えた貴様のことだ。帝国勇者を死んだことにしていたのも、今日になって再来したことも、全て儂を追い落として自分が王国を手に入れるための策謀だったのだろうッ!」
「――お前達! この男をさっさと連行しろ! これ以上戯言を吐かせるな!」
「ぬぅうあッ! 離せッ、離さぬかァッ!」

 その注目に乗じるように、ババルオはさらに声を張り上げて行く。バルスレイを糾弾するかのように。
 それに激昂したバルスレイの命により、精鋭騎士団は直ちにババルオの両脇を固め、馬車の中へと連行していった。彼が馬車に入れられ、扉が閉まるまで――バルスレイと「帝国勇者」への罵詈
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