第一章 邂逅のブロンズソード
第10話 ユニコンの幻影
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術だと!?」
ダタッツの口から語られた、帝国式投剣術という流派。その名を聞いたババルオは、直に見た彼の技と照らし合わせ――自らの私兵達が身につけていた闘剣術とは違う存在にたどり着くのだった。
――帝国式投剣術。
この世界を支配していた魔王を倒すため、異世界から勇者が召喚される数百年前。まだ、投石機も発達していない頃。
魔王が使役する飛竜の群れに、多くの兵士達が蹂躙されていた。剣も槍も届かず、矢では鱗を貫けない。そんな空の尖兵に対抗するべく、当時の帝国騎士達は矢や槍に勝る質量を持つ剣を、正確に投擲する術を練り上げたのである。
矢の如し速さで竜の鱗を貫く、飛空の剣。それが、帝国式投剣術。
膂力に恵まれた一部の兵士にしか扱えぬその技は、勇者が現れる時代が来るまで人類の矛であり続けたという伝説を残している。
だが、投石機や大砲の発達に伴い、投剣術は歴史の中で廃れて行き……実戦で使う兵士はいなくなったと言われている。
今では古文書にその名が僅かに登場するのみであり、そういった類に触れる機会を持つ特権階級――皇族や上流貴族の一部にしか知られていない。
(あのバルスレイ将軍が投剣術の研究をしていたと聞いたことはあるが……まさか、この小僧……!)
帝国軍最高司令官として、王国と戦い抜いた猛将バルスレイ。投剣術を現代に繋いでいる者など、その男しかいない――ババルオはそう踏んでいた。
しかし、ここにいるのはバルスレイではない。彼以外の男が投剣術を学び、体得までしているとは、にわかには信じられなかったのだ。
そこでババルオは、ある一人の男の存在を思い出す。
六年前の戦争の中で――バルスレイの指揮下のもと、鬼神の如き剣技を以て王国軍を、アイラックス将軍を屠った剣士がいたことを。
(そんなバカな……いや、しかし……それ以外には考えられんッ!)
その存在と、ダタッツの影が重なって行く。目に映るビジョンに、ババルオは息を飲むのだった。
「貴様は帝国のッ……!」
そして――ビジョンが示した仮説を語るべく、肥え太った唇が動き出した時。
「――そこまでだ、ババルオ。王国の民を苦しめてきた罪、今こそ清算してもらうぞ」
民衆の背後から迫る、騎馬の群れ。その軍勢に守られた馬車の中から響く、荘厳な声が――この場にいる全ての人間から、注目を集めるのだった。
ババルオの私兵達とは違う、煌びやかでありながら厳かな雰囲気を湛える鎧を纏う――帝国の精鋭騎士団。その一団は鮮やかに剣を抜き放ち、瞬く間に臨戦態勢に入っていく。
そして、彼らの背後に立つ指揮官――艶やかな銀髪と逞しい口髭を持つ、壮年の騎士は。己が歩んできた歴戦の道に裏打ちされた、鋭い眼差しで――精鋭騎士団の
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