第一章 邂逅のブロンズソード
第10話 ユニコンの幻影
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いを悟り――煙の向こうで微かに見える、ルーケンの姿を捉えるのだった。
(ぐ、ふふ。ダイアン姫の身柄さえ手に入れば、計画の軌道修正はできるはず。役立たずのアンジャルノンなど、もうどうでもよい。ダイアン姫を攫い、儂の奴隷として調教すれば結果は同じだ!)
一方、ババルオは周囲の混乱に乗じて、煙に身を隠しながら闘技舞台に上がり込んでいた。身動きが取れないダイアン姫の、肢体を狙って。
(……む? 妙だ。確かに姫はこの辺りに……!)
だが――起死回生の手段さえ、狙い通りには行かず。ババルオは、闘技舞台の上を彷徨い続けていた。
先程まで居たはずのダイアン姫が――忽然と、その姿を消していたのである。
(バカな、バカなバカなバカな! このままでは煙が晴れて……!)
思い描いた未来から、かけ離れて行く。その恐怖を前に、ババルオの全身から血の気が失われつつあった。
何が原因で。何のせいで。その答えを求め、自らが撒いた煙の中を徘徊する醜男。
時間経過により煙幕が消え去り、そんな彼の姿が衆目に晒された時。求め続けた答えは、ようやく明らかとなる。
「あ、あの平民ッ……!」
姫を担ぎ上げ、闘技舞台から逃げるように走り去って行く影。その背を見つけたババルオは、己に在る全ての憎しみを注ぐように――ルーケンを睨み付けるのだった。
「ルーケンさんっ!」
「へっ! ダタッツ君があれだけ頑張ったんだ、俺が働かねぇでどうするよ!」
「ルーケンさん……やったぁあっ!」
ハンナの元へ帰還したルーケンは汗だくの顔を上げ、得意げな笑みを浮かべる。姫を抱えたその姿に、ハンナは喜びを爆発させるように抱きつくのだった。
彼らの様子と、ダイアン姫が倒れていた場所に佇んでいるババルオ。それらを目の当たりにした人々は、状況を悟ると――
「やった……姫様が帰ってきたぁあぁあ!」
「ババルオの奴、姫様を攫おうとしてたんだ……なんて奴だっ!」
「だけど、もう大丈夫そうだぞ! 大手柄だなルーケンさんっ!」
――二人以上に、歓喜の渦を巻き起こすのだった。その様子を一瞥するダタッツも、口元を微かに緩めている。
アンジャルノンや私兵団は倒され、ダイアン姫の身柄も奪還された。
もう、ババルオを守るものは何もない。
力だけがものを言う舞台に立つ彼は、ダタッツとの対峙を余儀無くされるのだった。
「ぐ、ぬ、ぅぁ……!」
「――さて。手札はもうなくなってしまったな。力が正義、とするならお前が悪者になってしまうが、どうする?」
「な、なんなんだ……! アンジャルノンを倒した剣術といい……貴様、一体何なのだ!」
「帝国式投剣術のことか。帝国の上流貴族のお前なら、知っているはずだろう」
「投剣術……投剣
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