第一章 邂逅のブロンズソード
第10話 ユニコンの幻影
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その風に触れた彼女が、唇を震わせ呟く頃。
激突の轟音が闘技舞台に響き渡り――人々が静まり返る。そして、アンジャルノンの巨体が、地響きを上げて倒れ伏して行った。
受け身も取らず――頭から。
「……武器を失った以上、ジブンに戦闘を続行出来る能力はない。お前の勝ちだ、アンジャルノン」
それは、この巨人の意識が完全に刈り取られたことを意味している。
攻撃を繰り出したのは、アンジャルノンが先であった。ダタッツは、「後から」剣を投げた。
にもかかわらず、先に命中したのはダタッツの剣。それほどの速さで放たれた一撃が、アンジャルノンを打ち抜いたのである。
「もう一度立ち上がることが出来れば、な」
倒れ行く様など見るまでもない――とでも言うのか。ダタッツは力尽きたアンジャルノンの方を見向きもせず、バルコニーから戦慄の表情を浮かべるババルオを見上げた。
「さて。残るはお前一人だが、どうする? お前だけなら得物がなくとも、どうにでもなるぞ」
「な……なんだ。なんなんだ、お前は!」
「ただの旅人。何度もそう言っているはずだ」
ババルオは顔面蒼白のまま、辺りを見渡している。残っている兵はいないのか。儂を守る味方はいないのか。視線が、そう訴えているようだった。
しかし、その心の叫びはどこにも届かない。闘技舞台を囲っていた帝国兵達は、全員ダタッツに打ち倒されている。
(こんなバカなことが、あってたまるものか。この王国を手に入れる計画が……儂の国が、あんな小僧一人に!)
予期せぬ障害により、全てを失う恐怖。その反動による猛々しい憎しみを込めて、ババルオはダタッツを睨み付ける。
「ぬぅぅうぁ……!」
「……」
しかし、アンジャルノンを破ったダタッツがその程度で怯むはずもなく――冷ややかな眼差しで、絶えずこちらを見据えていた。
(……とにかく、ダイアン姫だ。ダイアン姫さえ手に入れれば、起死回生のチャンスはある!)
その瞳に射抜かれ、ババルオは正攻法では敵わないと、ようやく本能で悟る。次いで己の視線を、倒れたままのダイアン姫に移すのだった。
「……ふ、ふふ。良いのか? 次代の国王に、このような不敬を働いて」
「獄中の王になりたいのなら、好きにしろ」
「――獄中へ堕ちるのは、貴様だッ!」
刹那。ババルオはバルコニーから闘技舞台へ向け、懐に忍ばせていた球状の物体を投げ込んだ。
それは爆発するように弾け飛ぶと――周囲一帯を灰色の煙で包み込むのだった。
(煙幕……? この隙に逃げるつもりか? ――いや、違う!)
その煙は民衆が集まっている場所にまで蔓延しており、ダタッツの後ろで人々はパニックに陥っていた。
そんな中で、ダタッツはババルオの狙
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