第一章 邂逅のブロンズソード
第10話 ユニコンの幻影
[3/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
ると――目の前に広がる光景に歓喜の涙を流すのだった。
まだ、ダタッツは生きているのだと。
「なんだ、さっきの動きは……! さっきまでとは、まるで別人ではないかッ!?」
「容赦はしない、とは言ったがな。最初から本気を出すなどとは一言も言っていないぞ」
「なにをッ……!」
「あの二人が受けた痛みの、数千分の一でも味わってからでなければ――お前如きとやり合う気にもならなかったからな」
涙に滲む景色の向こうで、ダタッツは鋭い眼差しと共に剣を振り上げ――アンジャルノンの巨体へ肉迫する。
その電光石火の如き速さに、巨人は目を剥き……本能に襲い来る恐怖と相対した。
「このっ……小僧がァァァァッ!」
鉄球の間合いから、一瞬にして懐へと入り込むダタッツ。
その正面に、ダイアン姫を沈めた鉄拳が迫る。己に降りかかる「恐れ」を、振り切ろうとするかのように。
アンジャルノンには例え鉄球をかわされても、鋼鉄の籠手で固められた拳という武器がある。それを攻略しなければ、この巨壁を粉砕することは出来ない。
しかし、真っ向からダタッツに迫っているこの拳をかわせば、そこに隙が生まれる。その僅かなタイムラグがあれば、伸び切った鉄球を引き戻すことも出来る。
ダタッツが決定打を放つには、アンジャルノンの鉄球が戻ってくる前に、剣が届く間合いまで接敵するしかない。しかしこのまま直進すれば鉄拳に激突し、かわせば攻撃のチャンスを失う。
そのジレンマの中で――ダタッツは恐れることなく、ただひたむきに進み続けていた。まるで自分に迫る危機など、認識していないかのように。
そして――その勢いに身を任せたまま、籠手に向かい剣を振り下ろそうとする。
(バカめ、いくら腕が立とうと剣がなまくらでは勝ち目などない。そんな銅のおもちゃでは、俺の拳を粉砕することなど――)
一見すれば自殺行為でしかない、その行動を嘲り……アンジャルノンが口元を緩める――
「帝国式――『投』剣術」
――刹那。
ダタッツの手元から、銅の剣の柄が離れ……その刀身は、銅色の矢と成る。一角獣の幻影を纏うその一閃は、神獣の一角の如き鋭さで――アンジャルノンの額を狙う。
その擦り切れた切っ先は、空を斬り裂き風を断ち――巨人の拳を掠めていった。
「……が、あッ……!?」
そして。
「――『飛剣風』」
剣の先端が真紅の兜に激突した瞬間。
アンジャルノンの兜と、ダタッツの剣が――同時に砕け散るのだった。
刹那――衝撃により生まれる風が、闘技舞台を吹き抜けて……ハンナの頬を撫でる。
「……剣の、風……」
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ