第一章 邂逅のブロンズソード
第10話 ユニコンの幻影
[2/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
者を蹂躙する権利を持つ者のことだ」
「……力が強ければ弱者を蹂躙する権利がある――と?」
「無論だ。もし俺達が間違いであるなら、それは力によってのみ正されるだろう。そんな力があれば、の話だがな!」
高らかに己の道理を語るアンジャルノン。その狂気を孕んだ眼は、見る者達の本能に恐怖を植え付けて行く。
だが――最も近い位置からその眼差しを浴びているはずのダタッツは、一歩も退くことなく睨み返していた。
「あるさ」
「なんだと?」
水平に構えられた銅の剣が、光を浴びて鈍い輝きを放つ。
満身創痍となっているダタッツの一部として、その存在は一際強く煌めいていた。
「強い者が正しい。それこそが真実。確かにその通りだろう。――なら、お前はもう強者などではない」
「ふざけたことを。……虚勢にしか頼れないとは、惨めだな」
「虚勢かどうかは今にわかる。彼女達に正義がないと言いたいのなら――その「正義」の在り処、ジブンが教えてやる」
刹那、ダタッツの眼差しは剣に勝る鋭さを放ち――アンジャルノンの巨体さえ飲み込む程の殺気を、迸らせた。
「……威勢だけの若造が!」
その殺気に呑まれかけた巨漢は、自分をほんの一瞬でも怯ませた眼前の男に、激しい怒りを募らせる。
この男だけは絶対に殺す。その思いを乗せた鉄球が、再び鎚の如き軌道を描いてダタッツの頭上に迫った。
「――ッ!」
それを間一髪、上空に飛んでかわすダタッツ。――しかし、既にアンジャルノンは追撃の姿勢に入っていた。
「無駄だァ、どこに跳ぼうが俺の鉄球からは絶対に逃げられんッ!」
アンジャルノンの丸太のような腕が、下から抉るかのように振り上げられる。直後、鉄球はその動きに追従し、滞空しているダタッツへと向かって行った。
「だっ、駄目ぇっ!」
まるで生物のように獲物を付け狙う、漆黒の鉄塊。その姿に恐怖するハンナは、耳と目を閉じ悲鳴を上げる。
――ダタッツが撃ち落とされ、叩き潰される未来を予感して。
「……おぉおぉおッ!」
だが。
その未来は、幻に終わる。
激突の瞬間。空中で身を翻したダタッツは、鉄球を蹴ることでそこを足場に変え、さらにジャンプしたのだ。
軽やかに鉄球の追撃を回避した彼は、風に舞う葉のように地に降り立ち――再び剣を構える。……今度は、頭からは落ちなかったようだ。
「なっ……んだと!?」
「当たらなかったのが、そんなに不思議か?」
嘲るような言葉で語る、その口調は氷のように冷ややかなものだった。今までのダタッツとは全く違う――別格の剣士が、そこに居たのだ。
「……えっ……あ……!」
再び沸き立つ歓声の嵐。耳を塞いでいても響いて来るその喧騒に、ハンナは我に帰
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ