第一章 邂逅のブロンズソード
第8話 ロークの奮戦
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みにじろうとしている。それを抑止する力は、彼らにはない。
力こそが正義。それは、揺るぎない真実なのだから。
「あ、あいつら勝手なことばかり……って、あれ? ダタッツさんは?」
「ん? さっきまでそこに……」
一方で、ルーケンとハンナがダタッツの姿を見失っていた、その瞬間。
「ま、待てっ!」
帝国の蹂躙に、抗う者が現れた。
力が無くとも、残された気力だけを振り絞り――世の真理に立ち向かう者が居たのだ。
王国騎士団の鎧を纏い、短剣を振りかざすその姿は――騎士と呼ぶにはあまりにも頼りない。
しかし。そのブラウンの強き瞳は……圧倒的な体躯を誇る巨漢を、強く睨み上げている。
「ロー……ク……」
か細い声でその名を呼ぶ姫騎士は、我が目を疑うように驚愕の表情を浮かべていた。
この小さな騎士がここに立っている。その状況から導き出される末路が、脳裏を過ったのだ。
容赦を知らない今のアンジャルノンの前に立つなど、あまりにも無謀。十三歳前後という幼さを鑑みても、ロークの行動はあまりにも思慮に欠けている。
恐らく、それは本人も理解しているのだろう。小さく震える膝が、それを証明している。
「オ、オッ、オレは王国騎士団所属、ロークだ! ダイアン姫の身柄は、オレ達王国騎士団が預かる! お前達の出番はないっ!」
――それでも、立ち向かわなくてはならなかったのだ。
何処の馬の骨とも知れない旅人に、王国騎士団の立場を奪われてはならない。騎士団長の忘れ形見である自分に残された、たった一つの誇りだけが、この者を突き動かしていた。
「あ、あのチビいつの間に!」
「クソガキが、そこを動くな!」
民衆と帝国兵の対峙に紛れ、闘技舞台に上がり込んできた乱入者に、帝国兵達は目を丸くする。
次いで、そこから摘み出そうと数人が舞台へ登って行った。
「……待て。せっかく王国騎士団の代表がお出ましになったんだ。言い分くらいは聞いてやろうじゃねぇか」
「ア、アンジャルノン様! しかし……」
「言いたいことぐらいは言わせてやりな。どうせ、何も変わりゃしねぇ」
だが、その動きをアンジャルノンが静止する。もはや絶対絶命である王国側が、どんな抵抗を見せるのか――どんな風に、絶望してくれるのか。それを愉しみにしている表情だった。
その貌に恐怖を覚えた帝国兵達は、後退りするように舞台から降りて行く。対面しているローク自身も、その恐ろしさに触れていたが――逃げ出すことはなかった。
股下から湯気を上げても、膝が笑っていても。剣先が震えていても。
背中だけは、向けていなかったのだ。
「ほう、頑張るじゃないか」
「もう一度、言う! ダイアン姫の護衛は、騎士団の仕事だ! 帝国の手なん
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