第一章 邂逅のブロンズソード
第4話 ハンナの恋
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さんが怪我をしてしまいます!」
「怪我してるのはダタッツさんでしょっ!」
自分の怪我を全く意に介さず、せっせと皿の破片を拾い始めるダタッツ。そんな彼の姿に、ハンナは困惑して声を上げていた。
その一方で、足を引っ掛けた自分達に恨み言の一つも言わないダタッツに、若者達は言い知れぬ不気味さを覚えていた。
「け、けっ! てめぇみたいな木偶の坊、掃除を済ませたらさっさと消えちまえ! 目障りなんだよ!」
「そうそう! あんたみたいな女目当てのゲス野郎には、靴磨きがお似合いさ」
「全くだぜ、お前がいると思うと飯が不味くなるんだよっ! 何よりハンナちゃんに迷惑だろうがっ!」
「……あ、あなた達いい加減にっ――!」
その不快感が、さらに彼らを迫害へと駆り立てていた。口々にダタッツに罵声を浴びせる若者達に、ハンナがついに逆上する――直前。
「ほう、お前達には靴磨きがお似合いなのか?」
「……!?」
地獄の底から唸るような声が、辺り一帯に響き渡る。
本能に恐怖を叩き込むような、その声色に――若者達は震え上がり、咄嗟に振り返った。
そこには鬼――ならぬ、ルーケンが立ちはだかっている。
……そう。彼はしっかりと若者達の犯行を見ていたのだ。
彼らがハンナの気を引くために、ダタッツに恥をかかせようとしていることに、早くから感づいていたのである。
若者達も、ハンナに見られないようにすることに気を配り過ぎたせいで――自分達が彼女に近付けない一番の原因だったはずのルーケンの存在を、失念してしまっていた。
結果――彼らは、一番バレてはならなかった相手に、犯行の一部始終を見られてしまったのである。
「さぁて……奥でたっぷりと聞かせて貰おうか。お前達がどんな靴を磨きたいのかを、な」
「ひ、ひぃいぃ……!」
逃れられない地獄を予感し、若者達は顔面を蒼白にして震え上がる。その内の一人はこの空気から逃れようと、テーブルを蹴り倒して店の外へと走り出すが――
「待ちなさいっ!」
「あぎゃっ!」
ハンナに後頭部をフライパンで叩かれ。
「逃がさねーぞ若造!」
「ぐえっ!」
常連客達のヒップドロップを浴び、敢え無く御用となってしまうのだった。
その流れを目の当たりにして、残った若者達はさらに震え上がる。そんな彼らの様子に気づく気配もなく、ダタッツは未だに破片を拾い続けていた……。
「お、終わった……! 皆さん、お騒がせしてしまい申し訳ありませんでした! 破片は全部回収しましたので、ご安心くだ――あれ? どうされたんですかお客様?」
……その作業が終わる頃には、既に若者達がげっそりと痩せ細るまで絞られていたことは、言うまでもない。
ルーケンに締め上げられた
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