暁 〜小説投稿サイト〜
ダタッツ剣風 〜悪の勇者と奴隷の姫騎士〜
第一章 邂逅のブロンズソード
第4話 ハンナの恋
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 その瞬間を目撃したハンナは大慌てで持ち場から離れ、ダタッツの側へと駆け寄って行く。彼女に放置された常連客も、自分の注文より倒れたダタッツの方を気にかけていた。

「……おーおー、困ったもんだ。仕事がトロい上に店の皿まで割っちまって。こんな奴雇ってたら、この店潰れちまうんじゃねーの」
「ははは、言えてる言えてる」
「おいあんた、これ以上迷惑かけないうちに辞めといたら? ハンナちゃんが可哀想だと思わないわけ?」
「……!」

 一方、若者達は冷やかすような口調でダタッツをなじり、彼を見下ろしていた。彼らの嫌らしい視線は、徐々に倒れたダタッツから――彼の側に腰を下ろしたハンナの胸元へと向かっていく。

「おいおめーら! 兄ちゃんに対して随分な言い草じゃねーか」
「本当のことだろ! だいたい、こんな使えない奴のせいでこっちは怪我しそうになったんだぜ!」

 若者達の言葉遣いに、常連客達は眉を吊り上げて反発する。そんな彼らに対し、若者達は悪びれる様子もなくさらにダタッツを罵倒した。

 ハンナも無言で彼らを睨みつけたが、ダタッツが店の皿を割ってしまったことも仕事の能率が芳しくないのも事実であるため、何も言えずにいた。

 ――しかし彼女は、ダタッツが転倒した原因が若者達にあることには気づいていない。
 彼らはダタッツが背を向けた瞬間、後ろから彼の足を引っ掛けていたのだ。ハンナからは見えないように、彼女が目を離した瞬間を突いて。

 目撃者がいなければ、罪は立証できない。皿を割った原因が若者達にあると、証明する術はない。
 ハンナは直感で彼らの仕業であると勘付いてはいたが、その証拠がないことに唇を噛み締めていた。

(……とにかく、ダタッツさんの方を見なきゃ)

 犯人をとっちめることは出来なくても。せめて、ダタッツの怪我だけは処置しなくてはならない。
 そう思い立った彼女は、彼の容体を見ようと、皿が直撃した黒い髪に手を伸ばす。

 ――すると。

「もも、申し訳ありませんお客様! お怪我はありませんでしたか!?」
「きゃああぁあ!?」
「どわぁあぁあ!?」

 大量の皿の破片に当てられ、切り傷だらけになったダタッツが――頭から血を流したまま、勢いよく立ち上がったのである。
 その姿に仰天したハンナと若者達は、驚きのあまりひっくり返ってしまうのであった。

「な、ななっ……!」
「本当に申し訳ありません! ぼんやりしてたみたいで……。すぐに掃除しますから!」
「ダ、ダダ、ダタッツさん! それより頭! 血!」
「あ、すみませんハンナさん! 大事なお皿を……」
「そんなの別にいいから! 怪我してるんだから動いちゃダメだよぉ!」
「ジブンなら心配いりません、それより破片を片付けなきゃ、皆
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