第一章 邂逅のブロンズソード
第4話 ハンナの恋
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、背負う者として」
窓から入り込む風に、銀色の髪が靡く。その揺らぎに撫でられた彼の瞳は、鋭く研ぎ澄まされていた。
これから始まる、壮絶な戦いを予見しているのだ。決して避けられない、死闘を。
「私が出した勧告を気にも留めず、王国をいたずらに傷つけ陛下を苦しめる。――奴の罪は、果てしなく重いぞ」
「ええ。……しかし、将軍殿が奴の暫定統治まで引き継ぐというのは本当なのですか? 帝国軍最高司令官の座を、後進に譲ってまで……」
「私も、もう若くはない。王国の資源を得て、帝国の安泰が揺るぎないものとなった今、私にできる役割など高が知れている。己の力で立ち上がって行く国を見守る余生というのも、悪くはあるまい」
草原を見つめる、バルスレイ将軍の鋭い瞳は――地平線の彼方に聳える、王宮の影を目にした時。
光り輝く聖剣の如く。鋭利に冴え渡り――狙う先に在るものを貫いていた。
(……「ダタッツ」よ。お前が案じていた、この国の未来――今こそ私が切り開いて見せよう)
――その、城下町の運命を変える一団が近づいて来る頃。
ルーケンの料亭は「いつも通り」の激戦に見舞われていた。
「ハンナちゃあん、ビールおかわり!」
「もー、さっき飲んだばかりでしょ! 昼から飲み過ぎてちゃダメ!」
「おーい、ハンナちゃん! こっち来て一緒にお茶しない〜?」
「私仕事中なんだってば!」
「へっへへ……ハンナちゃん、相変わらずいいケツして――あだだだだ!」
「お触り禁止ッ!」
その原因の一つである看板娘のハンナは、常連客との日常会話に興じつつ、着実に注文をこなしていく。
長い経験により培われた、その迅速な立ち回りを遠巻きに眺めながら――ダタッツは皿洗いに奔走していた。
「……いつ見てもすごいですね、彼女」
「ま、元気だけは誰にも負けないって専らの評判だからな。それしか取り柄がない、とも言うがね」
「ルーケンさん聞こえてるッ!」
「うひっ、こえーこえー」
彼の隣で料理しているルーケンはのんびりとした口調で喋る一方、手は全く止めておらず、ハンナのツッコミを受け流しながら猛烈な速さで料理を次々と完成させていた。
大量の注文を的確に消化し、流れるようにご馳走を並べて行くルーケン。それを手早く、客が待つテーブルへ運んで行くハンナ。
無駄のない、洗練され尽くした彼らの動きを目の当たりにして、ダタッツは強く息を飲む。そして、自ずと悟るのだった。
――これが、プロフェッショナルの動きなのだと。
「ダタッツさん! ぽけっとしてないで早く持ってきて!」
「ほらほら! 女の子を待たせてんじゃねーぞ新入りウェイター!」
「は、はいただいま!」
ハンナと常連客の声に驚き、我に返るダタッツは大慌てで料理
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