第一章 邂逅のブロンズソード
第3話 城下町の料亭
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ますね。次は、食客として」
「しょ、食客だなんて滅相もない! このような場所に姫様が来られなくとも……!」
「城の食事は毒味を繰り返しているせいで、いつも冷え切っているんです。その点、こちらの料亭からはいつも温かい食事の香りがして……。特に昼間、巡回している時に鼻腔を擽る肉の匂いがたまらないんです。いけませんか?」
「そそ、それは……!」
気丈な面持ちに復活したダイアン姫は、跪くルーケンに対して穏やかに微笑み――彼に冷や汗をかかせている。
その姿を横目に見ながら、ダタッツはこっそりとハンナに耳打ちしていた。
(あの、親善試合とは一体……?)
(定期的に、ババルオっていう醜い帝国貴族がダイアン姫の剣技が見たいって、自分の部下と戦わせてるのよ。毎回、ダイアン姫が快勝してるんだけどね)
(なるほど。やはり、物凄くお強いのですね。ダイアン姫は)
(うん! 向こうも弱っちいのばっかりだから、実質的にはダイアン姫のカッコイイところが観れる演武みたいなものよ)
定期的に行われる親善試合。その主催者と思しき男の名を聞き、ダタッツは眉を潜める。
(……ところで、そのババルオとは?)
(戦後、城下町に屋敷を建てて居着いた好色ブサイク貴族よ。なんでも、王国の様子を監視する役割で来てるんだって。一応管理されてる立場だから、ダイアン姫も親善試合は断れないのよ……)
(そうだったんですか……本当に、大変なのですね)
(うん。――でも、ダイアン姫にかかればどんな敵も楽勝よ。今までもそうだったんだから!)
溢れんばかりの自信を込めて、ハンナは小声で姫君の勝利を宣言し――ダタッツに向けてウインクする。
その頃にはダイアン姫とルーケンの話にも決着がついており、結局彼女が親善試合の後に料亭まで来客することとなっていた。
「では……わたくしも、そろそろ城に戻ります。あまりに遅いと、父も心配しますから……」
「ええ。おやすみなさいませ、ダイアン姫」
「姫様、おやすみなさいませ!」
「おっ……おやすみなさいませっ!」
踵を返して立ち去って行くダイアン姫。
その背を三人は、膝をついたまま見送るのだった。
しばらく続いていた緊張の一時は、彼女の姿と足音が消えた時――終わりを迎える。
「ぶっ……はぁあ〜! まさかこんな時間に姫様が訪ねて来るなんてなぁ……!」
「もう私、心臓が止まるかと思っちゃった!」
「しかしダタッツ君、姫様を前にしてよく物怖じしなかったなぁ。だけど、もう少し慎ましくしてなきゃいかんぞ」
「は……はぁ、すみません。どうしても気になって仕方がなかったので……」
「全く……まぁ、この国の現状をよく知らんのなら無理もないか」
「帝国兵を怖がらない上に、ダイアン姫にいきなり質問しちゃうなんて。
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