第一章 邂逅のブロンズソード
第3話 城下町の料亭
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宿泊費と食費は、仕事の手伝いへの報酬として出してやる」
空気を変えるためか、ルーケンは話題を変え――意外な提案をする。その内容に、ダタッツは思わず目を丸くしていた。
「えぇ!? い、いや、そんなの悪いですよ!」
「なぁに。ハンナ目当ての客が増えてきて、人手が足りなくなってきたことだしな。君のような男なら、ハンナも気に入るだろう」
遠慮する彼に対し、ルーケンは乗り気で話を進めている。すると、その言葉に反応して――
「ちょ、ちょっとルーケンさんっ! 誤解されるようなこと言わないでよっ!」
――店の掃除をしていたハンナ本人が、顔を真っ赤にして割り込んで来るのだった。
「なんだハンナ。『すっごくいい人なんだから泊めてあげようよ』って言ってきたのはお前だろうが」
「そ、それはそうだけど! 私は別にそういうつもりで言ったわけじゃないんだから!」
「ほう? そういうつもりとはどういうつもりのことを言うのかな?」
「……もう! ルーケンさんのばかっ!」
「ハッハハハ!」
ぷりぷりと頬を膨らませる彼女の様子を楽しみながら、ルーケンは声を上げて笑っている。彼のからかいに機嫌を悪くしたのか、ハンナはジトっと目を細めてダタッツの方を見遣った。
「……泊めてあげるのは本当だけど。えっちなことはダメだからね」
「あの、ジブンはなにも……」
「あと……その。あの時、助けようとしてくれて、本当にありがとうね。ダタッツさんの気持ち、嬉しかったから」
ただ、やはり感謝の想いの方が優っていたのだろう。彼への礼を一通り口にして、彼女は恥ずかしがるように退散していく。
すると。
「あ……あっ!?」
「――夜分に、失礼します」
ハンナは逃げた先の扉から、毅然とした面持ちで現れた来客に驚愕するのだった。
営業時間を過ぎたあとになって来たことに驚いているわけではない。その来客が……ダイアン姫であることが問題なのだ。
昼間と変わらない緑の軽鎧と、煌びやかな剣と盾。その装備に身を固めた彼女は、物々しい表情で料亭の中に足を踏み入れて行く。
突然現れたこの国の王女に、三人は思わず目を見張るのだった。
慌てて両膝を着くルーケンとハンナに釣られるように、ダタッツも騎士の如く片膝を床に付け、剣を床に突き立てる。
「ひひひ、姫様!? なぜこのようなところまで……!」
「……よかった。痛みはもう引いているようですね。わたくしの魔法がよく効いているようで、何よりですわ」
「は、はい。姫様のお力添えのおかげで、この通りでございます。私共のような下々のために、なんとお礼を申し上げればよいのか……」
「下々、などではありません。あなた達という国民一人一人が、わたくし達の宝。王女として、その宝を守るた
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