第一章 邂逅のブロンズソード
第2話 姫騎士ダイアン
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の格好も含まれている。
ボロボロに擦り切れた青い服。くたびれた赤いマフラー。傷だらけの木製の盾に、刃こぼれだらけの銅の剣。
下級貴族に雇われた傭兵でも、もう少しマシに武装しているだろう。物乞いがありあわせの物で剣士ごっこに興じているような姿であれば、笑われるのも当然である。相手が強大な帝国兵であるなら、なおさらだ。
黒曜石の色を湛える艶やかな髪や、逞しい身体つきに整った目鼻立ちというまともな特徴を、丸ごと帳消しにするみずぼらしさなのだから。
「ちょっ! ちょっと待てってば! まだ話は終わっちゃいないぞ!」
しかし、そんなことを気にする素振りは全く見せず――彼は声を上げて帝国兵達を説得しようとしていた。
ルーケンが殴り倒された後だというのに、恐れを知らずに正面に回る男。そんな彼を一瞥した帝国兵の一人は、兜の奥から目の前の障害を睨みつける。
「……おい、グズ野郎。見逃してやるって言ってんのに、何してやがる」
「だから! 彼女を離せって――」
「あっそう――じゃあ死ね」
ドスを利かせた声で脅しても動かない男を前に、帝国兵は苛立ちを募らせ……一振りの剣を、腰の鞘から引き抜いた。
その様子を目撃した民衆から、悲鳴が上がる。緑と青空に包まれた王国の街が、血に塗れることになると察したのだ。
帝国兵に、躊躇はない。
「おらよっ!」
「――ッ!」
彼は瞬く間に剣を上段に構えると、鉄槌の如く振り下ろすのだった。白く煌びやかな刀身が、地面を打ち砕いて行く。
――だが、血は流れていない。
その地面は未だ、石畳の色のままだ。
「んなっ!?」
「なんだ、ありゃあ!?」
帝国兵達は、揃って驚嘆し――上空を見上げる。
そこには、彼らが予想だにしなかった景色があった。
「……フッ」
彼らが見上げた先には、斬られるはずだった男の姿がある。彼は斬撃を浴びる直前、帝国兵達が驚愕するほどの高さまで跳び上がっていたのだ。
人間業ではない。さらにその瞳は、度胸だけの愚か者とは違う――戦士としての凛々しさを漂わせている。
「なんなんだ、あいつはッ!?」
剣を振り下ろした帝国兵は目を剥き、彼と視線を交わす。先刻とは掛け離れた雰囲気を見せる、得体の知れない相手――その存在を前に、彼は柄を握る手に汗を滲ませた。
宙を舞う男は、そうして警戒する帝国兵達に不敵な笑みを浮かべ――幾度となく空中で身体を回転させながら、地面へと降りて行く。
その余裕綽々な態度が、帝国兵達の緊張をさらに煽っていた。
しかし。
「お、おい……! なんであんな奴が王国なんかにいるんだ! あんな体術、帝国の精鋭部隊の演武でも見たことないぞ!」
「わからねぇ……! まさか、
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