暁 〜小説投稿サイト〜
ダタッツ剣風 〜中年戦士と奴隷の女勇者〜
番外編 少女達の未来
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私の話を聞いてよぉ!」

 彼女の言葉足らずに端を発する誤解により、母はしみじみと頷き、父は動揺するようにカップを揺らして娘を問い詰めるようになってしまう。
 そんな二人の反応を前に、グーゼルは慌てて両手を振り、説明しようとするのだが……どちらも、聞く耳を持たない。

「……いい? グーゼル」
「なによ、もう」

 両親に振り回されて行くグーゼルは、神妙な表情の母を前にしても、頬を膨らませて不貞腐れている。
 だが、彼女は娘の反抗を気にすることなく、言葉を続けていく。――それは、母としての切なる願いだった。

「どんな巡り合わせがあるにせよ、あったにせよ。あなた自身が幸せになることを、忘れてはだめよ。どんなに平和な時代にだって、辛いことはいっぱいあるんだから」
「お母さん……」

 それを耳にして、ようやくグーゼルは母の言葉に耳を傾けた。
 母が、かつて帝国の侵略から逃れるために、遠方から逃げてきた外国人であることは知っている。そんな激動の時代を生きてきた母が語る言葉には、説得力があり過ぎたのだ。

「だから……その人には、ちゃんと幸せにしてもらいなさい。この先どんなことがあっても、前を向いていけるように。そして、その人のことも、幸せにしてあげられるように……ね?」
「う、うん……」
「お父さんはダメだ! 許さないぞ、まだグーゼルには早い! お前はまだ十四歳なんだぞ!」
「もう、お父さんたら。この年くらいの頃には、恋の一つや二つは経験してるものよ。私も十六の頃は……」
「なん、だと……」
「――ああもうっ! わかったから、そろそろ私の話も聞いてってば! お父さんもコーヒー零しちゃダメ、シミになっちゃうでしょ!」

 やがて、セドワ家の食卓は騒がしくも温かい団欒に包まれて行く。束の間の平和を、謳歌するように。

 ――その頃。
 城の会食場にて、両親である公主夫妻の前でグーゼルと全く同じことを口にしたクセニアの周囲は、セドワ家以上の大騒動に発展していたのだった。

 そんな彼女達の未来を視た占いは、的中したのか。外れたのか。
 それは十年後、公国が平和を取り戻した今でも、定かではない――。

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