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ダタッツ剣風 〜中年戦士と奴隷の女勇者〜
番外編 少女達の未来
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――彼女にしか見えない、水晶玉に映された光景に。剣を携えた、一人の男が現れた。
 艶やかに靡く、黒い髪。吸い込まれてしまいそうな、黒曜石の色を湛えた瞳。美術館の絵画から飛び出してきたかの如く、整えられた目鼻立ち。鍛え抜かれた肉体。
 その筋骨逞しく、凛々しさも備えた勇ましい若者は――険しい眼差しで、空を覆わんとする巨大な闇を睨みつけていた。彼女達とは違う別の女性を、庇うように背に隠しながら。

「……ほほう」

 それを見つめる占い師は、感嘆するように息を漏らすと――緊張した面持ちで結果を待つ二人を静かに見上げる。
 いよいよ結果が出る――。そう直感した彼女達は、同時に固唾を飲んで占い師の言葉を待った。

「……十年後じゃな。今から十年後、二人には素晴らしい出会いが待っておる。勇気と慈愛に溢れ、それに見合う強さを兼ね備えた――そう、勇者のような男に出会うじゃろう」
「ええっ!? ほほ、ほんとに!? す、すごぉい! ははうえさまにほうこくしなくちゃ!」
「私に、出会い!? そんな……勇者みたいって、そんな……」
「だが、勘違いしてはならぬ。見えた未来は、あくまで可能性。約束された将来ではない。その出会いが、永遠の愛に繋がるか否かは、そなたらに懸って……」

 やがて出てきた回答に、二人は思い思いの反応で舞い上がる。クセニアは大喜びで跳ね回り、グーゼルは髪の毛先を指先で弄りながら、照れるように口元を緩めていた。
 そんな彼女達に忠告するべく、占い師はきつい口調で声を上げるのだが――二人はまるで聞いていなかった。

「……勝手にしなされ」

 やがて占い師はぶすっとした声色で呟き、二人が満足げにこの場を後にするまでヘソを曲げていたのだった。

 ――その日の夜。
 クセニアを城まで送り届けたグーゼルは、この休暇を利用し、久々に家族に顔を合わせることになった。
 久方ぶりに家族三人で食卓を囲む中――ふと、占いの話を思い出した彼女は母に問い掛ける。

「ねぇお母さん。私がお嫁に行ったら……やっぱり寂しい?」
「……え?」
「ブボハッ!」

 だが、占いのことを前置きに話さなかったため。亜麻色の髪を持つ彼女の母は、突然飛び出た娘の言葉に目を丸くして。黒髪の父は、口にしていたコーヒーを盛大に噴き出すのだった。

「あら、なに? グーゼル、あなた好きな人が出来たの?」
「グ、グーゼル! 何を言い出すんだ何を! そういうことはちゃんとお父さんに相談しなさい!」
「え? いやあの、そういうわけじゃなくて……」
「お嫁に行きたいだなんて、よほどその人のことが……。そう、あの転んでは泣いてを繰り返してたグーゼルが……。早いものね……」
「相手はどこの人だね! 仕事は? 年収は? 馴れ初めは!?」
「ふ、二人とも
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