番外編 少女達の未来
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なしに訓練を抜け出すわけにも行かなかったのである。
先輩騎士達はそんな彼女に苦笑いを送ると、騎士団長の耳にこの件を報告しに向かった。程なくして、三十代半ばの風貌を持つ屈強な男が、豪快な笑みを浮かべてグーゼルの前にやってくる。
「はっははは。また姫様のお戯れか、グーゼル。お前も大変だなぁ」
「申し訳ありません団長、私の一存では判断いたしかねる案件で……」
「構わん構わん。いつも休み返上して、夜の見回りにも行ってるだろう? お前。たまには代休使って羽を伸ばしてこい。姫様が余計に不機嫌になる前にな」
「はい、ありがとうございます」
先ほど以上に頬を膨らませ、風船のような顔になっているクセニアを一瞥し、団長はグーゼルに外出するよう耳打ちする。そうして上司からの許可を得た少女騎士は、ようやく我儘公女を連れて休みを取ることに決めるのだった。
その後、鎧を脱いだ彼女は私服に着替え、護衛という名目を果たすために剣を腰に下げた状態で、クセニアを連れて城下町へと繰り出すことになった。
元気いっぱいに両手を上げる公女のそばに控える彼女は、ため息混じりに町へ歩み始めて行く。
「さぁ、いきますわよ! グーゼル!」
「……はい」
男の団員と寸分違わぬ格好で剣を振るっていた時とは打って変わり、今の彼女は白いチュニックと赤いスカートという女らしい服装に身を包んでいる。
そのため、鎧の下に押し込められていた彼女の豊満な胸が、解放された喜びに打ち震えるかの如く揺らめいていた。それはもう、たゆんたゆんと。
「……」
「公女殿下?」
「いまにみてらっしゃい!」
「何をです!?」
その双丘を睨み上げ、クセニアはさらに頬を膨らませて不機嫌さを露わにする。何が原因なのか気づいていない張本人は、公女が癇癪を起こす理由に辿り着けず、困惑の表情を浮かべるのだった。
「いつもお疲れ、グーゼルちゃん。ほら、大好きなリンゴ。サービスしとくよ」
「わぁ! ありがとうございます、おばさん!」
「ふふふ、どういたしまして。公女殿下も、お一つどうぞ」
「ありがとうー! えと、ほめてつかわすー!」
彼女達二人が並んで歩く姿は、街の人々にとっても見慣れた光景であり、道行く人々は皆、微笑ましげに彼女達を見守っていた。
そんな折、採れたての果実を売っている馴染みの露天商に通りがかった二人は、店を切り盛りしている恰幅のいい女性からリンゴを一つずつ貰い、満面の笑みで真っ赤なおやつにかぶり付く。
普段は騎士としての凛々しさを意識しているグーゼルも、この時ばかりは年相応の子供のように、無邪気な笑顔で果実を味わっていた。
「そういえば公女殿下。件の占い師に、何を占って頂くおつもりで?」
「うん? それはもちろん、わたしのは
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