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ダタッツ剣風 〜中年戦士と奴隷の女勇者〜
最終話 グーゼルの旅立ち
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てしまわれた。恐らくは、私達のように苦しんでいる人々を、己の剣で救うために」
「……はい」
「私は、彼に留まっていて欲しかった。そばにいて欲しかった……。きっとそれを見抜いておられたからこそ、何も告げずに去ってしまわれたのでしょう。引き留められると、わかっていたから……」
「……」

 切なげな面持ちで、月明かりに照らされた夜空を見上げる絶世の美姫。その横顔を見つめ、グーゼルも表情に陰りを見せる。

「ですが。私は、諦めるつもりはありません。いつかまた、彼に会える日が来るまで……ここで待ち続けます。彼とあなたが救って下さった民を、一生守り抜いて。いつ彼が帰ってきても、心からの笑顔で迎えられるように……」
「クセニア姫……」
「ですが……あなたは待ちきれないのでしょう? 昔から、あなたは気が短かった。パレードの時も、ジッとしているのが耐えられない、という顔でしたよ?」
「い、いえそんな……!」
「十年以上も一緒にいれば、嫌でもわかりますわ。恋敵の考えていることくらい」
「こ、恋敵……」

 クセニアに言及され、グーゼルは頬を赤らめる。自覚していることとはいえ、他人にそれを指摘されると、恥じらいのあまり身体が熱くなってしまうのだ。
 自分は、あの戦士を愛してしまったのだと。

「グーゼル。生まれ変わった公国の君主として、命じます。彼を探す旅に出なさい」
「ク、クセニア姫っ!?」
「公国のことなら、心配いりません。今は亡き父に代わり、私が見守って行きます。あなたはあなたのやり方で、ご自分の気持ちに向き合いなさい。彼をこの場に引き摺り出して婚姻を結ぶまで、私も『戦い』が終わったとは思いません」
「こ、婚姻って……! クセニア姫、彼が三十年前に消息を絶った帝国勇者だったのなら、どう若く見積もっても今は四十代半ばですよ!? しかも部下から聞いた話によると結婚歴があり、姫より歳上の子供もいるとか……! 姫の相手としては、些か年が離れすぎているかと……」
「たかが二十歳程度の差など、気にすることはありません。彼に恋慕している女性兵達も、同じでしょう。それに高名な武人が後妻を娶ることなど、珍しい話ではありませんわ」
「そ、それは……」
「私に奪われるのが嫌なら。私より先に彼を探し出し、愛を伝えることです。これは早い者勝ちですわ」

 クセニアは、そう宣戦布告すると――挑戦的な眼差しで、グーゼルを射抜く。
 彼女はいつかダタッツが帰って来るまで、ここで待ち続けるつもりなのだろう。再会した瞬間、彼を伴侶とするために。
 そうならないためには――ダタッツが公国に戻ってくる前に、彼を探し出さなければならない。そして……彼と結ばれるしかない。

(そ、そんな……そんなことって……。で、でも……!)

 彼を想いながらも、公国
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