第4話 勇者の資質
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」
「逃げろ! 奴ら本物の……本物の化け物だァァァ!」
悲鳴を上げ、這うように城下町から逃走する傭兵団。そんな彼らの後ろ姿を見送り、反乱軍はさらに高らか歓声を上げた。
その声に反応するように、街に囚われた人々も顔を出してくる。今まで奴隷のように傭兵団に働かされていた国民達は、ようやく反乱軍にいる家族との再会を果たしたのだ。
「父さん! 母さぁんっ!」
「オリア! オリアか! 無事でよかった……! ありがとう、本当にありがとう!」
「よく生きていてくれたわ……。あなたは自慢の娘よ、オリア!」
「父さん、母さん……う、うわぁあぁん!」
女性兵達は、喜びの涙で顔をくしゃくしゃにしながら、武器を捨てて愛する家族の胸に飛び込んで行く。長く封じ込めていた喜びという感情を、人々はようやく解き放つことができたのだ。
「……ふぅ」
「よくやった。やはり、君こそ本当の勇者だ。グーゼル」
「あ……戦士様……!」
そんな人々を暖かく見下ろすグーゼルとクセニアに、ダタッツは纏っていたボロ布マントを被せる。彼のために作られただけあってサイズは大きめであり、彼女達二人の身体がすっぽりと収まっていた。
「……あなたも、その一人じゃないの? 本当の帝国勇者さん」
「自分は、そう名乗るには手を汚し過ぎた」
「そうかな。――私は、汚れた手には触れないのだけど」
「えぇ。私も……」
ダタッツのゴツゴツした硬い手を、グーゼルとクセニアは愛おしげに握り締める。その温もりを肌で感じ、硬い表情のままだった彼は、初めて頬を緩めた。
そして、喜びに涙する民衆に視線を移す。グーゼルとクセニアも、その光景を瞳に映し――十年間の戦いの終わりを、実感した。
「本当の勇者は、人々に希望を灯すためにある。――あなたの教え、私はきっと忘れない。ずっと……忘れないわ」
「グーゼル……」
「そうだな。……君にしか、できないことだ」
そんな彼女の力強い宣言に、クセニアは顔を綻ばせ、ダタッツは強く頷いて見せた。
やがて、そんな彼らの前に――眩い光が差し込んでくる。
その煌きは、公国の夜明けを祝福するかのように……暖かく、この世界を包んでいた。
――そして。朝日が昇り、青空が晴れ渡る頃。
この国を救った英雄である、戦士ダタッツは――何処ともなく姿を消した。
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