第4話 勇者の資質
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が、まだマクシミリアンを打ち破るには足りない。彼は憤怒のままに斧を振るい、風圧で彼女を吹き飛ばす。
鎧を失い、身軽になっている彼女は容易に転倒し、床の上を転がって行く。
「くっ――あんっ!?」
そんな彼女に猛烈な勢いで迫るマクシミリアン。その巨大な敵を目前にして、グーゼルはなんとか立ち上がり――臀部に当たる、冷たい感覚に思わず振り返った。
そこには――マクシミリアンに弾かれ、床に突き刺さったままの剣があった。彼女は、自分の愛剣と迫る仇敵を交互に見遣る。
(一か八か、この一閃に懸ける! ダタッツ、もう一度だけ……私に力を貸して!)
そして、意を決するように勇ましい瞳でマクシミリアンを射抜き――右手に握る剣を水平に構える。
「その技は見切ってるぜェエェエエッ!」
「公国式闘剣術ッ!」
巨大な斧が、勇者の頭上に振り下ろされて行く。そのさらに先――巨漢の懐へと踏み込んだ時、彼女の手元を狙う蹴りが飛んできた。
いかに速さを増しても、その弱点は克服できず――彼女は再び剣を弾かれてしまう。
「もらったァァァ……ァッ!?」
「――二連ッ!」
だが。マクシミリアンは気づかなかった。それと同時に、彼女の左手に二本目の剣が握られていたことに。
「征王けぇぇえぇんッ!」
そして、一撃目と全く同じ軌道を描く、二撃目の横一閃が――マクシミリアンの肉体を上下に両断する……かに見えた。
だが、彼女の剣は彼の巨体を切り裂く寸前。微かに、刃が肌に触れる程度のところで――二連征王剣は、その一閃を止めてしまうのだった。
「……」
「ひ、ひひ……っ、ひぁあ……!」
時が止まったかのように、険しい表情のままマクシミリアンの腹に剣を当てるグーゼル。そんな彼女に対し、先程まで高圧的だった赤毛の鬼は、別人のように萎縮していた。
やがて尻餅をつき、股間から湯気を上げる彼を、公国勇者は彼に着せられた扇情的な衣装のまま、冷酷に見下ろしていた。
――斬るまでもない、と言わんばかりに。だが、その眼差しの奥には、勇者だけが持ち得る「優しさ」の色が滲んでいた。
「マクシミリアン。貴様を、逮捕する」
「……は、はいぃ……」
その問答を目の当たりにして――反乱軍も。傭兵団も。この戦いの勝敗を悟るのだった。
「や……やった! 勇者様が、グーゼル様が勝ったァァァ!」
「公国万歳! クセニア姫万歳っ! 勇者グーゼル、万歳ぃぃい!」
今までの落胆が嘘のように、反乱軍の兵達が沸き上がっていく。一方、指導者を失った傭兵団は、恐怖に顔を歪め――我先にと戦場から逃げ出して行く。
「ボ、ボスが負けた! そ、そんな……ありえねぇ!
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