第4話 勇者の資質
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見上げた上方には――こちら目掛けて飛び蹴りを放つダタッツの姿があった。
「上だとォォ!?」
「帝国式対地投剣術ッ――!」
彼の蹴り足は、盾に突き刺さった剣をさらに押し込むかのように――柄頭に命中する。
その衝撃に押し込まれた切っ先は、そのまま盾の中を直進し、取っ手を握る持ち主の手を貫いて行った。
「――飛剣風『稲妻』ァッ!」
「ぐがぁあぁあぁああッ!」
盾を貫く一閃で、腕を串刺しにされたマクシミリアンは、悶絶してのたうちまわる。その光景に、クセニアはダタッツの勝利を確信して笑顔を浮かべる――が。
「……!?」
息を切らし、片膝をついている彼の姿を目にして、表情を変える。明らかに、消耗している様子だ。
「……少しばかり、年甲斐もなくはしゃぎ過ぎたようだ」
「ぐ、ぎっ……く、くふふ。やはり年には勝てないか? 古代の遺物! どうやら、最強の座は――真の勇者の座はオレのもののようだな! まだオレには、右腕があるぞ!」
マクシミリアンは貫かれた左腕をぶら下げたまま、右手に握った斧を振りかざし、ダタッツに襲いかかる。間一髪、それをかわしたダタッツは、すれ違いざまに盾から剣を引き抜くと、再び彼と相対した。
「あぐっ! ……無駄な抵抗をッ!」
「マクシミリアン。一つ思い違いをしているぞ。自分を倒したところで、最強の座も真の勇者の座も、手に入らぬ」
「けっ、負け惜しみか!?」
「事実を言っているだけだ。その座が欲しくば、勇者として自分を超えた者に勝ってみせろ」
「そんな奴がどこにいる!」
「――お前の後ろだ!」
ダタッツはマクシミリアンの頭上を飛び越すように、持っていた剣を山なりに放り投げる。激しく回転しながら落ちていくその一振りを――こちらに向かって疾走してきたグーゼルがキャッチするのだった。
彼女は自力で鎖を引きちぎり、拘束から脱していたのだ。
「おぉおぉおおおおぉッ!」
「てめぇか! 大人しく飼われていればいいものを――ッ!?」
だが、グーゼルの剣はすでに見切っている。それを自負していたマクシミリアンは、己の勝利を疑わなかったが――
「はぁッ!」
「なっ――にィ!?」
――鎧も服も脱がされ、盾も取り上げられたことで却って身軽になり、さらにダタッツの激励を受けて気勢を取り戻したことで。彼女はマクシミリアンの見立てを遥かに凌ぐ疾さを発揮していた。
さらに、今のマクシミリアンは片腕しか使えない。斧一本では彼女の連撃を捌くことは出来ず――彼の全身に次々と傷が入って行く。
「ぬがぁああァァァ!」
「あうっ!?」
「許さねぇ! この場で叩き斬って晒し首にしてやる!」
だ
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