第4話 勇者の資質
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ミリアンは斧を振り回して襲いかかる。だが、中年の戦士は鮮やかな身のこなしでそれをかわし、防戦に徹していた。
「あんたを殺せば、帝国勇者の座はオレのものだ。そして、オレこそが正義になる。力こそ正義、力こそ勇者なんだからな!」
「違う。ただ戦うことに秀でているだけの者は、強者であって勇者ではない」
「……!」
その時。ダタッツが発した言葉に、グーゼルは思わず顔を上げる。
「勇者とは。その生き様を以て、今を生きる人々に希望を灯せる者のことを言う。力などではない。その者の勇気が人々を動かすから、その者は――勇者は尊いのだ」
「なにをわけのわからねぇこと、抜かしてやがる!」
マクシミリアンの一閃をジャンプでかわし、ダタッツは壁に突き刺さったままの剣を引き抜く。そして再び、飛剣風と呼ばれる投剣術の体勢に入った。
「確かに自分はかつて、力こそが全てであると――己の行いで表現してしまった。帝国勇者が、勇者を穢してしまった」
「ダタッツ……」
「だからこそ。そんな自分だからこそ。今を生きる本当の勇者に伝えたいのだ。――勇者の資質は、力などではないのだと。人を動かす、優しき心にあるのだと」
「……ッ!」
グーゼルは、その言葉を耳にして――感極まった表情を浮かべ、頬に雫を伝わせる。
ようやく理解したからだ。なぜ彼が、自分をあれほど気にかけていたのかを。
(ダタッツは……私に、同じ轍を踏ませないために……!)
彼女の横顔を見遣るクセニアも、それを察して――その涙には、気づかぬ振りをした。そして、彼女のために剣を振るわんとしている戦士の姿に、熱を帯びた視線を送っている。
そう。彼女は、気づかぬ振りをするためにグーゼルから視線を逸らしていた。だから、気がつかなかったのだ。
瞳に希望の炎を取り戻した彼女が――鎖を引きちぎろうとしていることに。
「け、優しき心!? ヘドが出るぜ! 血も凍る非情の帝国勇者が、なにを今更綺麗事ほざいてんだ!」
「お前のような男が正しさを語ろうというのだ。綺麗事の一つも言いたくなろう」
「面白れぇ。だったら証明してみろよ、オレの納得するやり方でなァ!」
「……やむを得ぬか」
そして――再び、ダタッツの手から光速の剣が射ち放たれる。だが、今度はマクシミリアンも完全に反応していた。
構えた盾で、飛剣風の一閃を受け止める。グーゼルの猛攻で装甲が弱っていたためか、弾くことはできず、そのまま盾に突き刺さってしまったが――その切っ先は、貫通するまでには至っていない。
これでダタッツは得物を失った。マクシミリアンはその事実から勝利を確信する――が。
その時にはすでに――ダタッツは姿を消していた。
「なっ……! ど、どこに――ッ!?」
刹那。ふと
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