第4話 勇者の資質
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飛剣風!」
刹那。男は腰から剣を引き抜くと――大きく上体を捻り、手にした剣を矢の如き速さで投げつける。一角獣《ユニコン》の幻影を、その刀身に纏わせて。
そして、切っ先はマクシミリアンの頬をかすめ、彼の視線の先にある壁に突き刺さった。
「剣の……風……」
人間の業を逸した、光速の投剣。その一閃が生む風に頬を撫でられたグーゼルは、唇を震わせ――呟く。
「……」
一方。自らの頬に手を当て、マクシミリアンは自分の手を見やる。そこには、久しく見ていない自分の血があった。
すると彼は一転して冷静になり、ゆらりと振り返る。その眼は――狂喜に歪んでいた。
「……オレも知っているぞ。三十年前、帝国勇者が使っていた、伝説の対空剣術」
「……」
「遥か昔。魔王の配下である飛竜に対抗するため、当時の帝国騎士が編み出した帝国式投剣術。大砲や投石機の発達に伴い、廃れて行った古代の剣技であるそれは、三十年前の戦争で久方ぶりに実戦で使われた」
体ごと向き直り、マクシミリアンは高らかに斧を振り上げる。この瞬間を待っていた、と言わんばかりの悦びを、全身で表現するように。
「……帝国勇者、あんたの手でな!」
(帝国勇者!? ダタッツがっ!?)
(どういうことですの!? あの殿方が、帝国勇者!?)
「……その呼び名は捨てた。三十年前にな」
「抜かせ! オレは待ち侘びていたんだ。力こそ正義という理念を体現したあんたに会って、あんたを超える。そうすりゃ、オレが正義だ。オレが絶対だ! 誰もオレに逆らえねぇ!」
そんな彼に対し、男は冷静な面持ちのまま、するりとマントを脱ぎ――鎧を纏う、逞しい肉体を露わにする。一角獣を模した鉄兜の先端が煌めき、首に巻かれた赤マフラーが、その弾みでしなやかに靡いた。
その男――ダタッツの全貌を目の当たりにして、マクシミリアンはさらに興奮するように口元を吊り上げた。一方、グーゼルとクセニアは、本物の帝国勇者だというダタッツの姿に、目を奪われていた。
「あんたは三十年前に死んだと言われていたが……オレは信じちゃいなかった。帝国騎士団にいた頃は、どれだけ成果を上げても言われたものさ。『帝国勇者の伝説には敵わない』とな。本当にそうなら、一度や二度の戦争であんたが死ぬはずがねぇ。だから騎士団を抜けてでも、あんたを探し続けたのさ。オレがこの世界で一番強くて、一番正しいんだってことを、証明するために!」
「それで、わざわざ帝国勇者を騙ったと?」
「ああそうだ。偽物が好き放題暴れてるって知りゃあ、きっと本物が成敗しにやってくる――ってなァ。現に、こうしてあんたが現れた! この時を、オレは待ち侘びてたんだ!」
真の姿を現したダタッツを前に、マクシ
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