第3話 女勇者の敗北
[5/5]
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
緒に戦うことはできない。一対一で私に勝てるとは思わない方がいいわ」
「試してみるか? 一対一ならどうなるか」
上の段からこちらを見下ろし、下卑た笑みで得物を構えるマクシミリアン。その挑発に乗るように、グーゼルは素早い踏み込みで切りかかって行く。
目にも留まらぬ斬撃の嵐が、マクシミリアンを襲う――が、彼は巨大な盾でその全てを受け切っていた。並の剣士なら、盾で防いでも力押しでガードを崩され、その隙に斬られていただろう。
それほどまでにグーゼルの斬撃は一つ一つが重く――それら全てを受け切るマクシミリアンの筋力も、常軌を逸しているのだ。
二人は激しいぶつかり合いを繰り広げながら、螺旋階段を駆け上がって行く。玉座の間を目指すかの如く。
そのさなかで、巨漢の盾と女勇者の剣は幾度となくぶつかり合い、お互いを削りあって行く。剣の刃が砂のようにこぼれていき、盾の傷が益々深くなっていく。
「公国式闘剣術――征王剣ッ!」
そして、全てを切り裂く横一閃の居合切りが――宙を斬る。
マクシミリアンはその技を前に、初めて回避という行動に出たのだ。その体躯に似合わない軽快なジャンプで征王剣をかわした彼は、階段を登りきると玉座の間へ逃げ込んで行く。
すぐさま彼を追いかけたグーゼルは、玉座の間で迎え撃ってきた彼の縦一閃をかわすと、再び剣を振るった。
二度目となる斬撃の嵐を浴び、マクシミリアンの盾が徐々に耐えきれなくなって行く。その攻勢の激しさに、彼は僅かに頬に汗を伝わせた。
「公国式闘剣術ッ!」
その様子を目撃したグーゼルは、もうすぐ勝てると確信し――決め手となる一閃を放つべく、上体を捻る。
あとは反動に任せるまま剣を振るえば、勝敗が決する。彼女はそう確信し、剣を握る手に力を込めた。
「がっ――!?」
だが。その直前、柄を握るグーゼルの手がマクシミリアンの蹴りで弾かれてしまった。手から離れた彼女の剣は、高く舞い上がり――床へと深く突き刺さる。
「振り抜く瞬間の、一瞬の硬直。見切ったぜ、あんたの剣」
(まさか! 今までの防戦は、征王剣を見切るための布石だったというの!?)
「バルタザールを殺った技なだけはある。なかなか手強かったぜ。ま、オレの敵ではなかったがな」
剣を失い、手を蹴られた痛みで片膝を着く彼女の首筋に、斧の刃が当てられる。微かに肌に触れただけで、そこからは一滴の鮮血が滴っていた。
「さて……いよいよお楽しみの時間だ。喜びな勇者様、公女殿下にもうすぐ会えるぜ?」
「……!?」
下卑た笑みを浮かべ、グーゼルににじり寄るマクシミリアン。その手には、クセニアに着せていたものと同じ――恥辱の衣装が握られていた。
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ