第3話 女勇者の敗北
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注目が集まる瞬間。オリア達反乱軍が目を丸くする一方で……傭兵団は状況を素早く判断し、一気に襲い掛かる。
だが――男の力は、彼らの予測を遥かに凌いでいた。
「……シッ!」
目にも留まらぬ速さで剣を振り上げた彼は、一斉に迫る荒くれ者達を次々と斬り捨てていく。斬られたことにさえ気づかせないほどの速さで命を絶たれ、男達は何が起きたのかわからない、という表情のまま息絶えていく。
「野郎ォォォ!」
「だっ、駄目ぇぇぇえっ!」
だが、傭兵達は背後にも大勢いる。ボロ布の男が正面の敵を全員切り裂いた瞬間、背後の伏兵が全体重を掛けた斧の一閃を振り下ろした。オリアの悲鳴も虚しく、その一撃は確実に男の背中に命中し、激しい衝撃音を上げる。
「……なにっ!?」
そう。「衝撃音」が響いたのだ。肉が刻まれる音ではなく。
それが意味するものと、己の肌に伝わる手応えから、伏兵は真実にたどり着いた。
「こ、こいつマントの下に盾を仕込んでッ――!」
だが、その頃にはすでに彼自身の命も絶たれていた。振り向きざまに振るわれた剣の一閃に首を刎ねられ、残された胴体から鮮血が噴き上がる。
「な、なんだこいつの強さ! ふ、普通じゃねぇ! 反則だぜあんなの!」
「逃げろ! まともやりあえる相手じゃねぇ!」
その光景に恐怖を覚えた荒くれ者達は、それ以上闘うことを望まず――蜘蛛の子を散らすように路地裏から逃げ出していく。そんな彼らの後姿を見遣りながら、ボロ布を纏う男は自分が斬り捨てた傭兵から毛皮のマントを剥ぎ取り、オリアの体にそっと被せた。
「せ、戦士様……あたし、あたしっ……!」
「――間に合ってよかった。君の小隊が路地に追いやられていると、別動隊から報告があってな。もう、大丈夫だ」
「オリア……よかった、よかった……!」
「う、あ……ああああぁ……」
自分に寄り添い、すすり泣く仲間達の肩を抱きながら――槍使いの少女は、緊張の糸を切られた反動から……恥も外聞もなく泣き出してしまう。そんな彼女の背中を優しくなでながら、ボロ布の戦士――ダタッツは、城の方向に視線を移す。
(そろそろ……彼女が潜入している頃だろうか)
――そして、その城の中にいるグーゼルは。
「ようこそ、公国勇者。歓迎するぜ」
「帝国勇者……ッ!」
玉座の間に続く螺旋階段まで行き着いたところで――武装した赤毛の武人と対峙していた。荘厳な斧や盾で身を固める、人の姿を持つ鬼と。
マクシミリアンという名を持つその鬼は、勇ましく剣を構えるグーゼルの姿を前に、厭らしい笑みを浮かべる。
「ここにいれば会えると思ってたぜ。極上のカラダによ」
「……全て、お見通しだったというわけね。でも、同じことよ。この狭い場所では、仲間と一
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