第3話 女勇者の敗北
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…今頃、どうしてるかしら。今朝には、もう姿が見えなくなっていたけど……)
一方。路地裏に入り込み、反乱軍と傭兵団の激戦区から逃れた彼女は、潜入ルートを目指しながら――あの戦士のことを考えていた。自分が彼にしたことを思い返し、グーゼルは人知れず眉を顰める。
(私は……なんてことをしたのだろう。なんてことを、言ってしまったのだろう。彼は会って間もない私のことを、本気で心配してくれていたのに……私は、自分のことばかりで。彼の言葉を聞こうともしなかった)
怒号を上げながら、慌ただしく城から駆け出して行く傭兵の群れに見つからないよう、息を殺し、気配を消して。彼女は城の地下水路を渡り、城内へと潜入していく。
だが、そんな時でさえ。彼女の頭からは、ダタッツへの謝罪の思いが離れずにいた。
(もし、無事にこの戦いを終えて、生きてもう一度彼に会えたら……その時は、誠心誠意を込めて謝ろう。そして、ちゃんと言わなきゃ。心配してくれて、ありがとう――って)
そんな思いを胸に抱きながら、女勇者は少しずつ――そして着実に。帝国勇者が待ち受けているであろう、玉座の間へと近づきつつあった。
一方。
城下町で交戦を続ける反乱軍の兵士達は、徐々に傭兵団の反撃に押され、路地裏に包囲され始めていた。
「くっ……!」
「へへ、さっきまでの威勢はどうした子猫ちゃん達ぃ。まさか、これだけナメた真似しといて、もう降参ってわけじゃねぇだろうな?」
「女だてらにここまで暴れてくれたんだ。相応の礼はさせてもらうぜ? そのカラダでな」
「ひ……!」
女性中心の兵士達を囲う荒くれ者達は、厭らしい笑みを浮かべて得物の刃を舐める。その獣欲に滾る眼差しに晒された女性兵は、怯むように身を竦ませた。
いかに気勢に溢れていようと、若い男に代わる「予備」でしかない彼女達は、戦闘経験でも数でも勝る傭兵団に苦戦を強いられている。……だが、そんな女性兵の中にも、気丈さを失わずに立ち向かおうとする者がいた。
「……馬鹿にしないで。あんた達になんか、死んでも好きにさせないんだから!」
そう言ってのけた、明るい茶髪をポニーテールで纏めた十八歳前後の少女は、手にした槍の切っ先を傭兵団に向ける。強い意志を宿した彼女の瞳は、この窮地の中でひと際煌めいていた。
「ほっほぉ。まだ活きのいい嬢ちゃんがいるとはな。お前さんからひん剥いてやろうか」
「やってみなさいよ、ブタ野郎!」
挑発的な態度を取るならず者に対し、罵声を浴びせて槍を振りかざす少女。そんな彼女を見遣る男達は、動揺することも逆上することもなく、ただニヤニヤと口元を吊り上げている。
こういうタイプほど、屈服させた時の征服感がたまらない。それが、彼らの価値観なのだ。
「オ、オリア、無
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