暁 〜小説投稿サイト〜
ダタッツ剣風 〜中年戦士と奴隷の女勇者〜
第1話 森の出会い
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で踏み込んでいた。

「ぐっ……!」
「これで終わりよ、公国式闘剣術――征王ッ……!?」

 再び、横一閃の切り払い。征王剣と呼ばれる、その一撃が決まろうとしている。
 だが……彼女は、その直前に踏みとどまり、技を中断してしまった。

 僅か一瞬、自分を覆った丸い影を目にして――気づいたからだ。自分を飛び越した鉄球の向かう先に――子供達がいることに。

「しまっ……!」

 振り返った先には、迫る鉄球に怯え、泣き叫ぶ子供達の姿。今から引き返しても、決して間に合わない。
 容赦無く鉄の塊にすり潰され、赤い挽肉になる子供達。その光景を想像してしまった彼女の顔から、一気に血の気が失われる。

 だが、結末はその予想から大きく外れた。

「……ッ!」
「えっ……!?」

 今まで事態を静観するばかりで、動く気配を見せなかった赤マフラーの男が、間一髪というところで子供達を抱え、鉄球を回避したのだ。
 敵とばかり思っていた彼の意外な行動に、グーゼルは思わず目を丸くする。

(なんで、あの男が……!? いや、それは後! 今は――)

 だが、すぐに気を取り直して敵方へと向き直る。その眼前には、グーゼルの顔面を狙う拳が迫っていた。

「このアマァァァァ!」
「――この腐れ外道を、叩っ斬る!」

 しかし、グーゼルはすでにそれを読んでいた。瞬く間にバルタザールの頭上へと跳び上がった彼女は、そのまま全体重を掛けるように、縦一文字に剣を振り下ろす。
 禿げた彼の頭頂から、足の爪先まで。グーゼルの剣は、紙を斬るかのようにバルタザールの巨体を両断するのだった。

「あ、あぎ、が……」
「痛いでしょう。辛いでしょう。それが、この国の――痛みよ」

 そして。もがき苦しみ、死にゆく彼を介錯するかのように――征王剣の一閃で、彼の上半身と下半身を切り分けてしまう。
 四等分されたバルタザールの身体は、激しい血飛沫を辺りに撒き散らすと、今度こそ動かなくなった。

「……」

 戦いを終えた彼女の視線が、子供達を抱えた赤マフラーの男に移される。だが、その眼からはすでに敵意は失われていた。
 一人の女として、一人の男と話す。そんな意思が、彼女の瞳に現れている。

「あなた、名前は?」
「申し遅れたが、ダタッツと申す。当てのない旅を続ける、流浪の一戦士だ」
「私は、反乱軍の司令官グーゼル・セドワ。公国勇者、とも呼ばれているわね」

 軽い自己紹介を済ませ、彼女は子供達のそばに歩み寄る。得体の知れない髭男よりは、やはり若い女性の方が安心できるのか、子供達は飛び跳ねるようにグーゼルのそばに駆け付けた。

「とにかく、アジトに戻らないと。案内するわ」
「敵は生かして帰さないんじゃなかったか?」
「敵なら
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