暁 〜小説投稿サイト〜
ダタッツ剣風 〜中年戦士と奴隷の女勇者〜
第1話 森の出会い
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しょう、あなた。この森に近づいた以上、ただでは済まさないわ」
「話をさせてくれるようには見えない――が、これだけは申し上げたい。こちらには、『君達』と戦う意思はない」
「……ッ!?」

 男の言及に、女剣士は僅かに身を強張らせる。同時に、彼女の周りにある茂みが音を立てて蠢いた。

「気づいていた……というの」
「気配を消さずに姿だけ隠しているようでは、まともに話をすることもできまい。君達が何者なのかは知らないが……まずは、話し合いたい」

 男の呼びかけに対しても、女剣士は警戒を緩めず、茂みを庇うように剣を構える。あくまでこちらを敵と認識している彼女の対応に、男も表情を曇らせた。

「……仕方が無いな」

 そして、やむなく――と言わんばかりに、腰に提げている剣に手を伸ばす。
 刹那。

「いたぜバルタザールさん、反乱軍の連中だァ!」
「公国勇者様も御一緒だぜェ!」

 突如、違う茂みから男達の下卑た笑い声が響いてくる。次の瞬間、声が聞こえた方向から、毛皮に身を包んだ荒くれ者達が飛び出してきた。
 斧や棍棒で武装した彼らは、嗜虐的な笑みを浮かべて女剣士と男を見遣る。彼らも、女剣士が隠そうとしていた茂みの中に気づいているようだった。

「へっへっへ……外国に売り飛ばす予定だったガキどもを積んだ馬車が、破壊されてるって情報を掴んでよ。現場に残った足跡を辿ってみりゃ、ビンゴだったってわけ」
「くっ……あんた達、まさか!」
「外国に行かれたら取り返せないって、焦ったのが運の尽きだったな公国勇者ァ。奴隷商の馬車もそこに積んだガキどもも、最初から反乱軍のアジトを突き止めるための囮なんだよォ!」
「とうとう割り出してやったぜ、反乱軍のアジト。十年もしつこく抵抗しやがってよぉ。俺達『マクシミリアン傭兵団』に従ってりゃあ、ちったぁマシに死ねたかも知れねぇってのに」

 荒くれ者達の嘲るような声に怯え、草むらの中から小さな子供達が飛び出してくる。彼らは女剣士の足元に縋り付くと、か細い声で「助けて」と呟いていた。
 全身に傷跡を残し、ボロ布で身を包んだその姿からは、幼い彼らがどのような仕打ちを受けてきたかが容易に伺えた。

「なら……あんた達を全員倒すしかないらしいわね」
「おおっと、残念ながらそいつは不可能だぜ。マクシミリアン傭兵団ナンバー2の、このバルタザール様が来ちまったからにはな」

 女剣士が改めて剣を構え直すと――荒くれ者達の後ろから、さらに巨大な体躯の男が現れた。禿頭と逞しい口髭を持つその巨漢は、棘だらけの歪な鉄球を振りかざし、女剣士と相対する。

「お前も懲りねえなぁグーゼル。最年少の公国騎士だったお前が、公国勇者と名乗って俺様達に反旗を翻して、もう十年。いい加減、諦めて降伏しようとは思わないの
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