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モンスターハンター 〜故郷なきクルセイダー〜
第7話 あの日の悪夢
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 生い茂る草原。高く聳え立つ丘に、鬱蒼と広がる森。そして――崖から一望できる、広大な湖。
 その自然に彩られた世界を、灰色の体を持つ草食動物――アプトノス達が、悠々と歩んでいる。彼らが穏やかに歩む、その草原の上を――アダイトは静かに見つめていた。
 片膝をつき、芝が蹄の形にゆがんでいる部分に手を当てるその姿を、クサンテが興味深げに覗き込む。

「……ここだな。ここで間違いない」
「本当なの? ドスファンゴがここを通るって」
「うん。ここに来る途中で通った山道に、これと同じ足跡があった。それに、ここは草食種の餌になる草花が多い。この近辺に生息しているなら、ここを確実に通るはずだ」

 ドスファンゴや、その配下であるブルファンゴと同じ草食種であるアプトノスが、群れをなしてこの草原を通っていた。そして、ブルファンゴにしては大き過ぎる蹄の跡。
 それが、ここをドスファンゴが通ると判断したアダイトの根拠だった。

「なるほど。で、どうする。罠を張り、周囲に斥候を送るか」
「はは、そんなことしてたら向こうが来る前に、こっちが疲れちゃうよ。相手が出てくるまでは、こちらも体力を温存させておこう」

 デンホルムと短く言葉を交わした後、彼はおもむろに蹄の跡があった地点に落とし穴を設置すると――踵を返して、虫取り網を取り出した。

「アダイト?」
「いやぁ。実はロイヤルカブト探してきてって、子供達にせがまれててさぁ。二人も、今のうちにゆっくり休んでなよ。長く歩いて疲れたろ?」
「こ、この状況で虫取りって……」

 そう言い残すと、アダイトは近場の虫がいる場所へ足を運び、楽しげに昆虫採集を始めるのだった。とでもではないが――ギルドナイツと繋がりを持つ上位ハンターの姿には見えない。

「……確かに、一理はある。しかしどうにも、胡散臭い男だな」
「ふふっ……彼の言う通りね。少し、休憩にしましょう」
「姫様、よろしいので?」
「えぇ。戦いが近いのなら、それまでにスタミナは取っておかないと。……うふふ、私も毒されちゃったかしら?」

 ギルドナイツの任務を代行する権限を持ちながら、まるで偉そうにしない。そればかりか底抜けに明るく振る舞い、子供達との関わりを大切にしている。
 そんな彼と接するうちに、すっかり毒気を抜かれてしまったか。クサンテは穏やかな笑みを浮かべ、近くの岩場に腰掛けてしまった。
 彼女の青い瞳は――子供のように虫と格闘している彼の姿を、何処か懐かしむように映している。――重ねているのだろう。幼き日から共に遊び、共に笑い合って過ごしてきた婚約者との日々を。

(姫様……)

 そんな主君の切なげな横顔を見遣り、デンホルムは複雑な心境でアダイトに視線を移す。間抜けなようで、何処かアダルバートに似た彼に、デンホル
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