第6話 クエストへの出発
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にーちゃん! またキノコ取りに行くの?」
「ねー、わたしも行きたーい!」
「ぼくもー!」
すると。アダイトの姿を見つけた村の子供達が、わらわらと彼の周りに集まってきた。基本的にハンターから距離を置いているこの村にしては、非常に珍しい光景であり――クサンテとデンホルムは互いに顔を見合わせる。
「ごめんなー。今度のクエストはキノコ狩りでも虫取りでもないんだ。ちょっと大変なお仕事だから、村で待ってな?」
「ちぇーっ……ね、いつ帰ってくるの? すぐ終わる?」
「ミミィとおままごとする約束、忘れてないよねっ?」
「ああ、もちろんさ。夕暮れには終わるし、次の休みにはおままごともするよ。今日はいっぱい生肉取ってくるからさ、にーちゃんがこんがり肉ご馳走してやるよ!」
「やったー!」
「にーちゃん大好き!」
「はは、こらこら」
どうやら、ハンターが怖くてもアダイトは別なのか――子供達は人懐こい笑顔を浮かべ、彼とじゃれあっている。ハンターを恐れる村の中であっても、子供達と打ち解けている彼の姿に、クサンテは目を丸くしていた。
(そっか……彼があんな振る舞いをしてるのは……村との信頼関係を築くためなんだ。村を拠点とするハンターにとって、村人との関わりは生業に大きく関わる。だから彼は……)
駆け出しの頃からハンターが集うドンドルマの街ばかりを拠点にしていた彼女は、同業者のハンターとの関わりしか意識せずに過ごしてきた。そのせいで、村で活動する場合の留意点を見落としていたのだ。
気づくと、あの悪辣ハンター達や自分達から距離を置いている村人達も、アダイトに対しては警戒心を解いているようだった。自分達も彼とほぼ同時期にこの村に来たというのに、すでに村人からの待遇には天地の差がある。
(私、何もわかってなかった……。上位に上がって、ドンドルマでも名が知れるようになって、それでいい気になって……一番大事なことを、見落としてたんだ。民を守るなんて大きなことを言っていながら、その民のことすらわかっていないままで……)
「姫様……?」
(――信じてみよう、この人を。ちょっと不安だけど、私達にないたくさんのものを持ってる、この人ならきっと……)
クサンテはそう思い立つと――子供達のそばにゆっくりと歩み寄る。そして、自分に怯えるようにアダイトに隠れる彼らと目線を合わせるため、片膝を付いた。
「……お姉ちゃんも、いっぱいお肉取ってくるからね。たくさん食べて、すくすく大きくなるのよ?」
そして……満面の笑みで、勝利を約束するのだった。それを受けて、子供達もすぐに笑顔になる。
「本当!? もっといっぱいお肉食べれるの!?」
「ふふ、本当よ。このお兄さんより、たくさん取って来ちゃうんだから」
「わぁーっ! にーちゃん
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