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モンスターハンター 〜故郷なきクルセイダー〜
第5話 夜に想う、愛する人の面影
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っぽど……」
「それは――」
「――姫様の口から語られるのは、忍びない。私から説明させて頂く。よろしいな? アダイト殿」
「ん? あ、ああ」

 デンホルムの威圧的な口調に、アダイトは何事かと目を丸くする。そんな彼を一瞥した巨漢は許可を得たと判断すると、早速いきさつを語り始めた。

 ――辺境の小国、ユベルブ公国。小さい領土ながら、豊かな自然と穏やかな景色に包まれた平和な国であるそこには、一人の王女がいた。
 心優しく見目麗しいその姫君は国民から愛され、国政を司る両親からも深い愛情を注がれていた。そして――代々王家に仕える騎士の血を引く少年とは、婚約者の関係にあり――彼女はいつも、その少年のそばに寄り添っていたという。
 だが、ある日。王女の誕生日を祝うため、少年の生家である騎士家の当主が、彼女を絶景が見える場所に連れて行き――そこで事件が起きた。
 国外から流れ出たモンスターの個体――ドスファンゴと遭遇し、王女を乗せた馬車一行が襲撃を受けたのだ。
 辛くもその場を脱出することはできたが……その過程で、同伴していた少年は王女を守るため、馬車から転落し――行方知れずとなった。
 幾度となく繰り返された捜索も虚しく、少年は最後まで発見されず、死と認められ――少年の父も王女も、深い悲しみと絶望に苛まれた。その上、馬車を襲ったドスファンゴも行方をくらまし――討伐隊も発見出来なかったのである。
 そして、残された彼女は愛する騎士の仇を討つためハンターとなり、自分達の幸せを奪ったドスファンゴの討伐を目指すようになったのである。

「――と、いうことだ。以来、姫様はアダルバート坊ちゃまの敵討ちのため、日夜邁進しておられるのである」
「なるほど……ね。それで所構わず、ドスファンゴばっかり付け狙ってるのか。しかし、よく周りが許したな。王様は何も言わなかったのかい?」
「お父様の許可なんて、取ってないわ。私が勝手に飛び出して、デンホルムが付いてきただけ」
「姫様を連れ戻す、というのが本来の私の任務なのだがな。この気高く真っ直ぐな瞳で射抜かれては、その志を曲げさせることなど不可能であると思い知らされる……」
「――やれやれ。大変だな、デンホルムさんも」

 頭を抱える巨漢を一瞥し、アダイトは苦笑交じりにクサンテを見遣る。

「……この村の狩り場は、公国の領土からも近い位置にある。あの個体は、この近辺から公国領に流れ出た可能性もあるのよ。――しかも、あのモンスターの素材から作られた馬車を、簡単に傷付ける攻撃力。あれは、間違いなく上位種のものだわ」
「つまり、今度こそ狙ってきた騎士の仇――ってことか」
「えぇ。……明日、全ての決着を付ける。アダルバート様の仇は――私が討つ」

 クサンテはそう宣言し、強い眼差しをアダイトに向ける。
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