第4話 恥辱を受けし姫君
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結び目が、一気に緩んで行く。
(いやっ……助けて! アダルバート様あぁっ!)
その瞬間に目を背ける彼女の目尻に、涙が浮かぶ。そして――今は亡き許嫁に、助けを求めた瞬間。
「……村はずれの小屋が、妙に騒がしいと思ったら。あんた達、ちょっとおいたが過ぎるんじゃないの」
白馬の王子――には程遠い男が。暗闇を打ち砕くが如く、ドアを蹴破っていた。
男のシルエットが姫君の目に映ると、彼の周囲には月夜に照らされた草原と――小さい家が幾つも窺える。どうやら、ここは村の外れにある小屋だったらしい。
予期せぬ襲撃に男達は怒号を上げ、ドアを蹴破った青年の前に立ち塞がる。一方、クサンテとデンホルムは信じられないという表情で、眼前の光景に釘付けになっていた。
窮地に現れた青年は――あの寄生丸見えの上位ハンター、アダイトだったのだ。
「なんだ、てめぇ!」
「何って……見てわかるでしょ、同業者だよ同業者。会ったことあるでしょ? 忘れちゃったかな。おいら、アダイト・クロスターってんだ。最近このロノム村に派遣されたばっかりで――」
「んなこと聞いてんじゃねぇ! 何しに来やがった!」
「えっと……拘束? 現行犯逮捕ってことになるのかな」
「逮捕だぁ……!?」
この状況を理解していないのか。まるで場違いな振る舞いで男達を困惑させているアダイトは、ちらりとクサンテやデンホルムを一瞥した。
「近頃、妙な情報があったんだよ。このロノム村は辺境も辺境。遠方の小国なんて言われてるユベルブ公国より、もっとド田舎。――なのに、そこの常駐ハンターはやけに羽振りがいい。万年下位な上にろくにクエストもこなしてないのに、連日連夜、飲んで騒いでも破産しない資産がある」
「……!」
「で、なんか変だなーって調べてみたら、近くに奴隷商のシンジケートがあるって情報も掘り出しちゃってさ。繋がりの有無を確かめるため、派遣されてみたら――ビンゴだったと」
能天気な口調ながら、話している内容はかなり深刻なものだった。田舎村の常駐ハンターが、奴隷商と結託して人身売買を行っていた――という不祥事を、ここに来る前から掴んでいたというのだから。
自分達の後ろ暗い部分を全て言い当てた眼前の男に、野獣達は顔を見合わせ――素早く結論を出した。この男は、即刻殺して口を封じるべきだと。
「……死ねエェエッ!」
ハンターではないグルの数人が、持っていた斧や鉈で斬りかかる。だが、アダイトは無言のまま、持っていた鉄の盾で全てを受け流し――全員の頭を、その鉄塊で殴打した。
男達は悲鳴を上げる暇もなく――膝から崩れ落ちて行く。まるで演劇のようなその一瞬に、誰もが目を剥いた。
「……やだな。荒事は好きじゃないってのに」
「て、てめぇまさか――ギル
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