想定外
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張感が高まる中、一つの声がそれをうち壊してしまう。
「レオ〜ン!!聞こえないの〜!?」
ビクッ
突然聞こえてきた少女からの声に思わず体がビクついた二人。同じ行動をした二人だったが、その後の思考は全く別々の方向へと向かっていく。
(ヤバッ。今ので俺がレオンってバレた?)
レオンは自分の名前が呼ばれたことに反応し、体が動いてしまった。そのため、ユウカからそれを指摘され回答されるのではないかと恐怖を抱いていた。対してユウカはというと・・・
(ソフィアめ。急に声が聞こえたからビビッちまったぜ)
ソフィアの突然の声に驚き、体をビクッとさせてしまったため、目の前の人物が体が揺れたのも同じ理由だと思っていた。
しかし、度重なる不運に見回れているレオンはそれに気付くほど心に余裕はなく、冷静さを取り戻すような間を置くこともできずにいた。
(バレたならここは、ソフィアに全て賭ける!!)
自分の正体がバレたと勘違いしているレオンはある考えに達した。それは、ここから壁を飛び越えて、ソフィアがユウカよりも早く“見つけた”コールを行い10秒間の回答権を得ること。
その時間のうちに自分がソフィアの元に辿り着ければなんとかなる。今のレオンにはそれしか手段が思い付かなかった。
思い立ったらすぐに実行。膝を軽く曲げ地面を強く蹴り白い壁に向かって飛び上がるタヌキ。サルは突然目の前から消えたそれの姿を捉えようと視線を上げる。
(やっぱりあいつレオンだったのか!!)
迷路とするために作られた巨大な壁を飛び越えるほどの跳躍を見せるタヌキを見て中身が誰かわかったユウカ。
(ソフィア、コールしてくれ!!)
祈りながら飛び上がるレオンは、自分の姿が見える位置にソフィアがいることを信じることしかできない。ユウカとソフィア、どちらが先にコールをするか、そこに焦点が集まっていた会場。そんな中、信じられない出来事が起こった。
ガッ
短すぎる足、明らかに出っ張りすぎているお腹、言い訳ならいくらでも見つかるだろう。圧倒的な身体能力を持っている少年の入ったタヌキの足が壁へと引っ掛り、
(あ・・・)
そのまま壁の向こうへと転落していった。
ポヨンッポヨンッ
情けないお腹のバウンド音が周囲に響き渡る。次第にバウンドが弱まり、お腹を下にして止まるタヌキだったが、手足が短く一切動くことができない。完全に動くことができなくなってしまった少年は、諦めたかのようにもがくのをやめた。
「・・・29番、レオン・バスティア」
壁の向こうから申し訳ないような声でコールがされる。その時のユウカとレオンは、互いにいたたまれない気持ちになっていた。
『ユウカ選手正解です!!29番タヌキ!!退場です!!』
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