第三部 ZODIAC CRUSADERS
CHAPTER#4
PRIMAL ONE
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抱擁を終えたシャナの脇で、
淑女は本の中の姫君のように足を交差し
スカートの両端を摘んで頭を下げる。
その髪を飾るヘッドドレスから、
彼女の数十倍は無味乾燥な声が発せられた。
「う、う〜む。確かにシャナから幾度となく話は聞かされていたが……
実際こうして逢うと、驚きを禁じ得んな」
「そうか? オレはすぐに解ったがな。
何しろ見た目が “そのまま” だからよ」
ジョセフが面映ゆい感じで苦笑を浮かべる横でその孫が言葉を返す。
(この、男は……)
遠間から己を評する長身の青年を、
ヴィルヘルミナは脇の少女に向けるのとは対極の視線で見据えた。
先刻、異形の戦場にて最愛の者と共に姿を現した、一人の男。
状況から推察して “すたんど” とかいうモノを
その身に携える異能者らしいが、
さも当然のようにこの方の傍にいる立ち振る舞いが勘に障った。
加えてこの方自身がその者に注ぐ視線も、
明らかに従者に向けられるソレではない。
もしや、いや、まさか、ありえないという否定の言葉が次々と心中で湧くが、
どれも確定的な裏打ちを持たない。
まぁ確かに、風貌は、それほど、悪くなくもないが。
「アンタが、ヴィルヘルミナか?」
己の裡で煩悶する間に、件の男が目の前に立っていた。
(……いきなり、呼び捨てでありますか?)
(斬首)
仄かに漂う麝香に苛立ちながら、
淑女と被契約者は無感情に無頼の貴公子を見上げた。
「シャナから色々と聞いてるぜ。相当な遣い手らしいな?
ジジイ共も世話ンなったようだし、改めて礼を言っとくぜ」
(ほう)
承太郎の穏やかな申し出に、アラストールが意外そうな声を漏らした。
ほんの一ヶ月ばかりの付き合いだが、その雰囲気が変わっているコトに彼は気づいた。
最初に出逢った頃の、アノ触れる者全て切り刻むような危うい気配が、
今は随分と薄れている。
少なくとも、初見の女にこのような友好的な態度を
取る男ではなかった筈だ(例外はあるが)
「先程からあなた方が言っている、
その “シャナ” というのは、
一体誰のコトでありますか? よもや」
幾分瞳を鋭く、威圧するような声で問うヴィルヘルミナの前で、
「あ? コイツの事に決まってンだろ? なぁ?」
承太郎が最愛の少女の頭に手を乗せポンポンと叩く(彼女も別段イヤがってはいない)
(――ッッ!!)
(獄門)
表情を変えず激昂する淑女の頭で、白いヘッドドレスが解れかけた。
そこに。
「ごめんね、言っておかなくて悪かった。
私はいま “シャナ” って呼ばれてるの。
ジョセフが一生懸命考えて付けてくれたのよ。いいでしょ?」
最愛なる者が満面の笑顔でそう告げる。
本来 「名前」 等必要ない、
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