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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百七十四話 未発
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タインホフ元帥が頷いた。
「あの医師の素性は」
「一ヶ月ほど前、ノイケルン宮内尚書の推薦で宮内省の職員として雇われました」
私の言葉にリヒテンラーデ侯もシュタインホフ元帥も訝しげな表情をした。
「医師ではないのか?」
「リヒテンラーデ侯、宮廷医として雇われたわけでは有りません。但し医師の資格は持っています」
「なるほどの、医師として雇えば身元調査も厳しいからの。肝心なのはあそこに医師としている事か……。医師として雇われる必要は無いということじゃな」
何処か感心したように頷いているリヒテンラーデ侯にシュタインホフ元帥が顔を顰めた。
「閣下、感心している場合ではありませんぞ。お分かりでしょう、彼らが何をしようとしたか」
「分かっておる。クーデターじゃな」
クーデター、その言葉が尚書室に響いた。
「私とヴァレンシュタインを殺し実権を握るつもりだったのじゃろう」
何処と無く他人事のような侯の口調だった。
「しかし、近衛兵の一部だけでそんな事が可能だと考えるとは……」
「そうでもない、内務省が協力すればの。戦争をするのではない、卿らの拘束、オーディンの掌握だけなら可能じゃ」
思わずシュタインホフ元帥と顔を見合わせた。
「では、内務省もこの一件にかんでいたと?」
「多分の、近衛の暴動がラムスドルフによって鎮圧された事で成功する目が無くなったと考えたのじゃろうな。だから動かなかった」
「となるとノイケルン宮内尚書の死は……」
「口封じ、と言う事かの」
「……」
尚書室に沈黙が落ちた。やはりそうか、疑ってはいたがリヒテンラーデ侯とシュタインホフ元帥の言葉に溜息が出る思いだ。
「しかし、警察の力だけで権力の維持が可能だと思ったわけでもありますまい」
「当然じゃの」
リヒテンラーデ侯とシュタインホフ元帥が私を見た。彼らが何を言いたいのかは分かる。
「軍の力が必要ですな。接触したのはローエングラム伯でしょう」
「それ以外はあるまいな」
「それで、どうであった。卿に接触してきたと聞いたが」
厳しい目だ。リヒテンラーデ侯もシュタインホフ元帥もこちらを厳しい目で見ている。
「おかしな点は有りませんでしたな」
「……」
「ヴァレンシュタインの安否の確認、作戦の続行、変更の有無を確認してきました」
「……それで」
探るような表情でシュタインホフ元帥が訪ねてきた。
「それから宇宙艦隊全軍の指揮統括を小官に御願いしたいと」
「……」
「ただ、気になったのはこちらに接触してきたのがかなり早かったと思います」
リヒテンラーデ侯は天井をシュタインホフ元帥は床を見ている。
「誰かが積極的に情報を流しましたな」
暫くしてからシュタインホフ元帥が呟いた。
「エーレンベ
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