第二十七話 起死回生の一手
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鈴谷も前線に押し出し、敵砲火をかいくぐりつつ主砲を発射した。
その3キロ西、輸送艦隊本隊にも敵が出現しつつあった。右舷3時、そして南東4時方向から敵の深海棲艦が出現し向かってきている。既に発艦した鳳翔と葛城の航空隊がけん制しつつあるが、敵は進撃をやめない。
囮輸送艦隊、別働警戒隊、そして鳳翔、葛城の航空隊の攻撃を潜り抜け、いよいよ敵が迫ってきていた。
伊勢と日向の二人は輸送艦隊の最後尾を固めていたが、その二人の眼に右舷から敵が接近しつつあるのが見えてきた。
「ついに敵がやってきたか・・・・。」
伊勢がつぶやいた。
「日向、いよいよだよ。この作戦、私たちの手で絶対に成功させよう。」
「あぁ。伊勢、やるぞ。」
『撃て!!』
二人は同時に叫んだ。輸送船団の後衛を任された二人は東に展開し、近づく深海棲艦を片っ端から撃破していく。その脇では長良が撃ち漏らした深海棲艦を至近距離で仕留め、近づけなかった。日向は通信を開いた。
「鳳翔、日向だ。敵は3時及び4時方向から進撃してきている。我々が食い止める。前衛の由良、綾波、不知火とともに一刻も早く横須賀に行ってくれ!」
この通信を聞いた鳳翔は一人うなずいた。日向からの報告のほか、翔鶴からの情報の敵部隊も接近しつつある。
このままでは包囲される。
だが、鳳翔は冷静さを崩さなかった。
「わかりました。そちらも無理をなさらないように。気を付けてください。」
「ど、どうするんですか?このままでは――。」
「葛城さん、ここからが本当の戦いになります。覚悟は・・・いいですね?」
葛城はごくりと喉を鳴らした。だが、次の瞬間しっかりと点頭していた。
「葛城さん、横須賀に向けて緊急無電を発してください。もう無線封鎖をする必要はありません。」
「はいっ!!!」
葛城はせわしなく通信回線を開いて電文を撃ち続けた。
それを傍らで見ながら、鳳翔は輸送艦隊に通信回線を開いた。
「全艦隊に伝達します。」
鳳翔は息を吸った。
「これより横須賀に向けての最後の行程に入ります。横須賀到達まで約1時間。1時間を乗り切れば、私たちは助かります。各艦、全速力で、進んでください!」
明白な答えはなかったが、各艦はサーチライトを一斉に点滅させて、了解の合図を放った。
「行きます。」
各艦は白波をその舳先に立て、全速力で進み始めた。飛ぶように水面が走り抜ける。その中にあって、鳳翔、葛城は全力で全方位を確認し、あらゆる事態に対処できるように目を向け続けていた。前方に遠く由良、不知火、綾波の3人が見える。彼女たちも輪形陣形を取りつつ敵を警戒していた。そして、やや後方、輪形陣形の中心には艦隊防空の要となる照月が全方位警戒態勢を敷きながら進んでいく。いざともなれば彼女の誇る対空砲火が深海棲艦機を食い止めて
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