第二十七話 起死回生の一手
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輸送艦隊を通過していった。まるで回遊する魚の群れのように。
「あぁ、良かった。ひとまず安心ですね。」
「まったく、心臓が止まるかと思ったわ。危なかっ――。」
その直後、胸に腹に響く轟音があたりにこだまし、凄まじい水柱が噴き上がる音がした。
「被弾!?いったいどこに――!」
慌ててあたりを見まわしたビスマルクはあっと声を上げた。やや左にいた輸送艦の一隻の右舷に噴き上がった水柱が無数の霧となって海上に落ちていく。それがはっきりと見えるのは、被弾した艦が早くも火災を起こしているからだった。
「くそっ!!」
ビスマルクは臍を噛んだ。
「プリンツ・オイゲン、至急付近の艦娘とともに急行、乗員を救出して!私は残存艦隊を指揮してこの海域を脱出するから!!」
「わ、わかりました!!」
プリンツ・オイゲンは慌てながら火災を起こしている艦に走っていく。
「・・・火災を起こしてしまったために、無灯火航行は意味をなさなくなったわ。これでは――。」
その時、ビスマルクは異音にもにた叫び声を耳にした。
「――来る!」
身構えた彼女にいつの間にか接近していた深海棲艦が襲い掛かってきた。ビスマルクは巧みにかわし、深海棲艦を火災の光の方におびき寄せ、射程内に捕えた。
「夜戦か・・・。経験は乏しいけれど、何とか頑張ってみるか。絶対にここは通さない!!」
ビスマルクは右手を振りぬいた。
「FEUER!!」
38センチ主砲が火を吹き、突進してきた軽巡1隻を撃破、後続の駆逐艦を破壊した。火を背にしている分深海棲艦側が不利。そのことをわかっていても突進をやめなかった。
「私一人にこんなにかかってくるなんて、一体奴らは――。」
はっと顔を上げると、あたりには黒煙と炎を上げた輸送艦がいくつも漂っていた。深海棲艦の一大部隊が殺到しそこかしこで集中攻撃をかけてきていたのだ。
「やはり、ここで仕留める気ね。」
ビスマルクは主砲弾を装填し、身構えた。そこに見慣れない正規空母艦娘、そして利根が走ってきた。
「利根、雲龍、天城!!」
「ビスマルクよ、奴ら本気になって吾輩たちを叩き続けてきておるぞ。」
「望むところよ!むしろそっちの方が好都合だわ。」
ビスマルクはそう言った。そして不敵な笑みを浮かべた。
「バカな奴らよね、こちらが囮とも知らないで。」
鳳翔は今回の作戦で伊勢と日向たちの案を基礎とし、さらにそこに常識を超えた発案をしたのだった。すなわち、ビスマルクたち鎮守府護衛艦隊主力には空の輸送艦隊を率いさせ、艦隊そのものを囮として深海棲艦を引き付け、そのすきに本隊は迂回して突破するというものだった。
ビスマルク達は、鳳翔たちの後ろを進んでいる。本隊を狙われたら、という意見も出ないではなかったが、鳳翔は囮艦隊の方には不審がられない程度の灯火をつけるように提案、さ
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