第二十七話 起死回生の一手
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輸送作戦の2日目も終わりに近づき、あたりは漆黒の闇が漂っていた。
「あ〜あ、呉鎮守府に戻ったと思ったら、また横須賀に行かなくちゃならないなんて、司令官私たちをこき使いすぎ!!」
雷がぶーたれている。
「しっ!!静かにしなさいよ!敵に聞かれたらどうするの?」
と、暁。
「そっちこそ声が大きいわよ!」
「なんですって!レディーがこんな時にはしたない大声出すわけはないでしょ!」
「出してるってば!」
「出して――。」
パンパンッ!と二人の頭を軽くはたいたのは、ビスマルクだった。
「あんたたちうるさい!今大事な大事な作戦中よ!見張りをおろそかにしてどうするの!?」
普段は絶対に手を出さないビスマルクが殺気立っている。それほど重要なのだと二人は改めて身が震えあがる思いだった。
「ご、ごめんなさいなのです、ごめんなさいなのです!」
「あ〜雷ちゃんが謝らなくていい気がする、かな。」
と、プリンツ・オイゲンが複雑そうな顔をした。
「持ち場に戻りなさい。警戒を厳にして。今夜が山場なんだからね!!」
『は、はいっ!!』
暁、雷、電の3人はあわただしく元の配置に戻っていった。
「やれやれ、大丈夫かしらね、これで。」
ビスマルクが腰に手を当てた。
「姉様、大丈夫ですよ。きっとうまくいきます!」
「だといいけど・・・・。」
その時、ビスマルクはかなたで一瞬光った光に目を向けた。それはすぐに消えたが、彼女にはその意味が瞬時にして理解できた。
「よし、所定の位置に到着。ここからが本番よ。」
その言葉と同時に輸送艦隊が速力を若干増した。艦隊は相模湾沖に差し掛かっていた。ここは以前横須賀に向かう途上の紀伊・榛名たちが機動部隊と会敵した海域であり、敵に制海権を握られつつある危険地域だった。最近も頻々と深海棲艦が出現しているとの報が入ってきている。
「ここを通り抜ければ、ひとまずは安心・・・・。なんとか無事に切り抜けたいところね。」
ビスマルクはつぶやいた。
「姉様、あれ・・・・。」
不意にプリンツ・オイゲンが指さした。
「何?どこ?」
「だから、あれ、です。ほら!」
ビスマルクは目にしたものを見て慄然となった。闇の中に光る白い痕跡が迫ってきている。
「魚雷!?」
ついに恐れていたもの、しかも闇夜にもっとも出会いたくないものに当たってしまった。
「・・・・チッ!!雷跡右舷より多数接近!!全艦隊、緊急回避!!」
彼女はすばやく周りを確認した。雷跡上にいる艦はないか。狙われているのは誰なのか。
「来ます!」
プリンツ・オイゲンが息を詰めるようにして叫んだ。
息詰まる一瞬――。
その数十秒は艦娘たちも乗組員たちも誰もが凍りついたように動かなかった。
魚雷群は何事もなかったかのように
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