第二十七話 起死回生の一手
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えました。」
先行していた綾波が突然速度を落とし、集まってきた艦娘たちに小声で言った。
「えっ?どこに?」
「しっ!」
鳳翔が葛城を制した。
「来た。」
日向がつぶやいた。闇の中を黒々とした物体が徐々に表れ、白波を静かに蹴立てて進んでいる。
「輸送艦だわ。さすがのタイミングね。」
と、伊勢。輸送艦隊は一定の速度を保ったまま艦娘たちのわきを静かに通過していく。その中に艦娘らしい姿もある。先行した第6駆逐隊や利根たちが既に配置についているのだろう。
また、特筆すべき事項として、横須賀から回航されたばかりの最新鋭艦娘として防空駆逐艦の照月が加わっている。輸送船団にとって、上空からの艦載機の機銃攻撃も脅威だった。防空駆逐艦娘の存在は敵の艦載機に対して大きな防御となるだろうが、惜しむらくはただ一人だということだ。せめて四〜五人いれば話は違っただろう。
「皆さん。」
鳳翔は皆を見た。
「ここからが本番です。既に各隊は所定の位置について行動しています。皆さんも定められた通りの位置に着き、護衛任務を開始してください。全艦隊は完全無線封鎖、非常時を除き、無線の使用は不可とします。」
皆は一斉にうなずき、所定の場所に散っていった。
「葛城さんは私と一緒に。」
「え?でも、いいんですか?私、雲龍姉や天城姉のところにいった方が――。」
「いいえ、お二人の事なら大丈夫です。」
そうまで言われては従うほかなく、葛城も鳳翔と一緒に輸送艦隊の前衛第二陣につくこととなった。既に綾波、そして不知火と由良の後姿が見える。この3人が再前衛として輸送艦隊全体を引っ張っていくこととなる。
全艦隊は、周辺警戒を厳にしつつ、漆黒の海を航行していくのだった。
執務室にて、提督のモノローグ――。
やっぱり航空機による輸送作戦にしとけばよかったか。だが、あれだけの物資を飛行機で輸送するには時間もかかるし、無理がある。そんなことをしている余裕もない。危険は承知だが、一気に運ぶしかないだろう。俺は鳳翔の立案した作戦を裁可した。
今回の作戦は普段とは色が違う。ただの戦闘であれば俺はこれほど心配はしない。だが、無防備な輸送艦隊を護りぬいての、それも夜間、さらに長距離航行の重圧はとても普段の戦闘行動の比ではない。
だから俺は護衛のイージス艦に乗り組んで一緒に行きたかった。事実そうしかけたが、副官たちの猛烈な反対にあった。こっそり抜け出そうとしたが、埠頭でとめられ、ここにこうして監視されながらのこらずを得なかった。夜間だから航空支援も期待できない。俺にできることは予定地点の航空基地に連絡し、支援依頼をすることくらいだった。くぞっ!!!
俺には例によって例の通り祈ることしかできないが、どうか全員無事で帰ってきてほしい。それだけだ
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