第二十七話 起死回生の一手
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剛たちをも追い越し、全速力で一人走り続けていた。彼方に無数の黒い点が見えた。そのうち何隻かは黒煙を上げているが、とにかく輸送艦隊はまだ沈んではいない。紀伊は上空に目を向けた。前もって発艦していた艦載機たちは上空を旋回している。前方に目を戻したとき、目の前の艦隊の嚮導艦娘が誰なのかを知った紀伊は力いっぱい叫んだ。
「由良さ〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん!!」
紀伊は大声で叫び続けた。何度目かの叫びで、ようやく由良が気がついたらしく、大きく手を振り上げた。
「紀伊さん!!!」
二人は海上で手を取り合って再会を喜んだ。由良の姿はボロボロだった。ここまで気を張り詰めてきたのだろう、ふっと気を失いそうになった由良は慌てて気力を取り戻そうと頭を振った。
「良かった!無事で本当によかった!!」
「紀伊さん、でも、まだ・・・・・。」
由良が一瞬つらそうな顔をした。
「お願いです!鳳翔さんたちを、皆を助けてください!皆深海棲艦を食い止めようとバラバラになって・・・・このままじゃ!!」
由良はかいつまんでこれまでのことを説明した。事態は予想したよりも悪かったようだ。紀伊はすぐにうなずいた。
「わかりました。由良さんは早く、横須賀に!!」
「はいっ!!」
由良は再び航行を開始し、輸送艦隊もその後に従う。
「艦載機、輸送艦隊上空の援護を!!」
戦・爆・攻の連合部隊はたちまち輸送艦隊に接近し、上空の警戒に当たった。紀伊は後ろを振り返った。続々と艦娘たちがやってきている。その艦娘たちが、あるものは由良のもとに、あるものは輸送艦隊の前後左右について警戒に当たった。これなら十分な護衛の下に横須賀にたどり着けるだろう。金剛たちはいち早く後衛について警戒態勢に入っていた。
「姉様。」
近江、讃岐、そしてやや離れたところに尾張がいる。
「私はこれから皆を救いに行きます。」
「私も行きます。」
「当然あたしも行きます。で、たぶんというか絶対尾張姉様はいかないでしょうから、輸送船団の留守番でもしていてもらいましょうか?」
「フン。」
尾張は顔をそむけたが、驚いたことにすぐに視線を戻して言いはなった。
「私も行くわ。」
「は?今なんて――。」
「私も行くって言ったのよ。いいの?時間がないんでしょう?」
「でも――。」
「勘違いしないで。どうせここで何言ってもあなたを止めることなどできない。私個人としてはボロ船を救いに新鋭艦を投入するのは間違ってると思うわ。でも、だからといってむざむざ戦力を沈めたくはないのよ。それだけの事。」
いいかたは最悪だったが、とにかく尾張としても放っておけないと感じているのは確かのようだった。
「Key!!」
そこに金剛がやってきた。
「私たちも行きマ〜ス。さっきは抜かれてしまいましたが、金剛型の高速、侮らない方がいいネ!」
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