暁 〜小説投稿サイト〜
艦隊これくしょん【幻の特務艦】
第二十七話 起死回生の一手
[12/17]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話

「どうしたの?あなたは右翼を守っているはずでは――。」
「鳳翔さんが、危ないのです!!すぐに私を救援に行かせてください!!」
由良は混乱しそうな顔をしたが、すぐに首を振った。
「そんなことはできません!これ以上護衛を減らせば、もう輸送艦隊を守り切れない!」
「ですが、敵は後ろからやってきています。ここを守り切れば、横須賀に入ったも同じではないですか!?」
「しかし――。」
「由良先輩。」
不知火が口を開いた。
「私が右翼につきます。由良先輩は嚮導艦として輸送艦隊を引っ張っていってください。」
「・・・・・・。」
「お願いです。綾波を行かせてあげてください。」
由良は少しためらっていたが、やがて諦めたようにうなずいた。
「いいでしょう。でも無理は――。」
「ありがとうございます!!」
綾波は頭を下げると、全速力で海面を走り去っていった。双方が反対方向に走っているので、綾波の姿はたちまち白い点に変わり、かすんで見えなくなってしまった。由良はそれを見送っていた。
「ついに、私だけになったか・・・・。」
由良は唇をかんだ。このような大作戦における嚮導の重圧はこれまでとは比較にならないほど重かった。にもかかわらず頑張ってこれたのは教導が一人ではなかったからだ。だが、今、ついに一人が離脱し、もう一人も配置換えのために前衛から離脱しようとしている。後方に照月がいるが、彼女は全対空砲火を次々と飛来する深海棲艦機に向けて放ち続けており、こちらを掩護する余裕など全くない様子だった。

 由良はひとりになりつつあった。

「私は右翼につきます。ご武運を。」
不知火がいい、反転していった。引き留めたかったが、その手はついに動かなかった。誰しもがギリギリのところで戦っている。第一波の後も何度かの襲来を受け、護衛のイージス艦が何隻か輸送艦の盾となって炎上、離脱していった。救助に行きたかったが、そうなれば輸送艦隊が孤立する。由良達は何度も涙をこらえながら見捨てていくしかなかった。幸い炎上中の艦から短艇が離脱していくのが見えたから、あれが無事に陸地にたどり着くのを祈るしかなかった。

 一人になっても戦うほかない。最後の最後には自分も深海棲艦と刺し違える覚悟で挑むしかない。由良はそう覚悟を決めていた。

横須賀海軍鎮守府特務参謀室――。
「なんですって!?」
葵が叫び声を上げた。
「なんでそんな重要なこと黙ってたわけ!?え?私が任せたですって?それは時と場合に――。ああもうっ!!!あんたと話している場合じゃないわ!!!すぐに皆を集めて掩護させるから!!!」
葵はドアをけり破り、部屋の外に転げるように出ていった。何度も廊下で滑り、宿舎の外に出たところで一人の艦娘に出っくわした。
「あ、おはようございます。朝から早いですね――。」

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ