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艦隊これくしょん【幻の特務艦】
第二十七話 起死回生の一手
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たちも合流を果たし、総力を挙げて敵機動部隊との交戦をつづけているが、敵は減る気配がない。
「駄目じゃ、いったん後退しよう。もう頃合いじゃろう。横須賀に輸送艦隊が入港したのなら吾輩たちがここで戦う必要も意味もない。」
「まだよ!まだ入港の連絡がない以上、もう少し奮戦しなくては、敵がそちらに行ってしまうわ!」
「しかしな、もう吾輩たちも――。」
「ヤマトが滅んでもいいの!?」
利根ははじかれたようにビスマルクを見た。
「私たちが全滅しても物資が無事に届いて、横須賀が息を吹き返して、作戦が完遂できれば、上々じゃないの?違うの・・・・?」
最後の語尾は震えていた。
「利根、あんたの心はそんなものだったの!?」
利根はしばらく言葉が出なかった。ヤマト所属の自分よりも独国からやってきたビスマルクがこんなにもヤマトのことを思い覚悟を固めている。それに比べて自分は何ということを言ってしまったのだろう。
今ここで退けば、鳳翔たちに負担がかかる。自分の怠惰によって戦死者も出るかもしれない。そうなればたとえ自分が生き残ったとしても一生後悔し続けるだろう。
「そうか、そうじゃな。まったく・・・吾輩ときたら、とんでもない醜態を見せてしまった。ヤマト所属艦娘の吾輩が、独国から回航してきたおぬしに意見されるとはな。」
利根は自嘲気味に笑った。
「よし!ならもう一度戦うぞ。奴らを一隻たりとも横須賀へ向けるな!!」


 鳳翔は疲れ切っていたが、内心安堵を覚えてもいた。浦賀水道を突破し、あと一息で横須賀にたどり着けるところまで来ていた。既に救援信号は出していたから、間もなく横須賀から救援艦隊が到着するだろう。そうなれば、輸送艦隊は無事に横須賀に入港できる。
 
 そう思った次の瞬間だった。

 ザアッ!!と至近距離に水柱が立ち上るのが視界の隅に入った。はっと後ろを振り向いた鳳翔は絶句した。この期に及んでもまだ深海棲艦は追撃をやめなかった。撃ち漏らしたであろう数隻の敵艦隊が全速力でこちらに迫ってくる。
「ここまで来て・・・・まだ!?」
鳳翔は矢筒をちらと見た。もう矢は撃ち尽くして残るは数本のみだった。だが、ここで止まるわけにはいかない。
「ここを通すわけには、行きません!!」
鳳翔は反転し、敵艦隊に向き直ると、キリキリと矢をつがえ、大空に放った。

 輸送艦隊の前衛にあって、右翼を守っていた綾波がはっと顔を後ろに向けた。
「・・・・・・?」
彼女は自分の胸に手を当てた。このようなことは初めてだったが、何やらとても胸騒ぎがする。紀伊がこの場にいたら、その意味を理解し、教えただろう。だが、綾波はその原因に
すぐに思い当った。
「後衛が・・・鳳翔さんが!?」
彼女はすぐに由良のもとに走った。
「由良先輩!!」
由良は驚いた顔をした。

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