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先恋
先恋〜気付かない大切な事〜
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部活の練習も終わり、下校時間が迫る。生徒達が校門から外へと出て行く。
「さようなら、」
沙奈は下校していく生徒達に声を掛けながら、その姿を見送っていた。
「瑞木先生、さよなら」
後ろから生徒が挨拶をしてくれているのに気付き、振り返る。
「春先君、さよなら、」
沙奈は微笑んで一礼する陸太に同じ様に返す。
「あ、今日、本当に…ありがとね」
「いえ、気にしないで下さい、先生も、緊張してると思いますが、これからもお願いしますね」
陸太は優しく笑う。沙奈もつられて微笑んでしまう。
「それじゃあ、さよなら、先生」
「はい、さよなら」
陸太の背を見ていると、陸太の学生鞄から何かが落ちる。
(………?)
気付いていない様子の陸太に、沙奈は声を掛けた。陸太が振り向く、
「はい?何でしょうか?」
「これ…」
沙奈は地面に落ちたそれを拾い、陸太に差し出す。
「落としたよ?」
「え?」
沙奈もそれを見て、それが何なのかその時気付いた。
「これ…」
「ああ、気にしないで下さい、すみません、ありがとうございました、」
そう言い一礼した後、陸太は帰って行った。
「……?」
アレを渡した時の陸太の複雑そうな顔が、頭から離れなかった。


「何だったんだろ…アレ…」
沙奈は目に見えない誰かに問うように呟いた。あんな顔をする位だから、何かあったのだろうか?学校に持ってきているという事は、とても大切な物なのだろうか?沢山の疑問が頭に浮かぶ。浮かんでも答えが見つからない無数の疑問は、小さな紙切れが積み重なるように、沙奈の心の中に少しずつ積もり、山になっていった。
「…うーん…大事な物なんだろうけど…、何でこんなに気になるんだろ…?うーん…彼女さんとかに貰ったもので…今喧嘩してるとか…」
“彼女”その言葉でチクリと心が痛んだ気がした。沙奈は不思議そうに胸元に手をやり、「また変なのが増えた…」と、疑問が増えた事を不思議に思いながら呟いた。





ーー次の日ーー
「あ、おはようございます、瑞木先生」
「おはよう、よく会うね」
沙奈はそう言いそっと微笑む。
「ですね、フフッ、」
陸太もそう答えた。
「運命かもね〜」
沙奈は言った後、自分の言葉を思い返し、小さく両眼を見開いた。“運命かもね”?何処から出てきた言葉だろうか?何故そう思ったのか?突然出てきたその言葉が不思議で仕方ない。運命でありたかったのか?いや、そんな筈…教師と生徒で?まさか、ふざけ混じりにからかう様に口から出ただけだ。そう思うと、そうな気もする。
「かもですね、運命か〜」
陸太が沙奈を見つめ、目を細める。
「良いですね、運命って」
陸太も、沙奈のようにふざけ混じりで言っている。分かっている。分かっていない方がおかしいだろう。しかし、何故だろう
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