第32話『凶気の科学者』
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はそれを自分で作る。
守られるだけじゃダメなんだ。
俺も、戦うんだ・・・!
「もう終わり、かしら」
不意に響いた寂しげな声。
そして、床に人影が倒れるのが見えた。
俺が考えている間に、事態は進展していたのだ。
「部長!」
悲鳴にも似た叫び声を俺は上げた。
俺の眼前、いつの間にかコンクリート製の床にうつ伏せに倒れる部長。まだ微かに動きは見せているが、起き上がれるとは到底思えなかった。
再決意の矢先でこんな事態…。
俺の中の何かが、プツリと切れた。
「……っ!!」
拳に風を纏わせ、必死の形相で標的を見る。
その形相の中、瞳には涙が浮かんでいた。
「次は貴方ね」
茜原さんはあくまで冷静に、俺を見て静かに言った。
その声とほぼ同時…俺の拳は茜原さんへと向かう。
それは強風の如き音を立て、風圧もかなりのものだったはずだ。
「いっ…!」
けれども、容易くその手首を掴まれて風の威力は死滅する。
しかも女子とは思えない握力で絞められ、俺は悲痛な声を洩らした。
「貴方も面白い物を魅せてくれるわね。雷の次は・・・空気の流れを操る、風ってとこかしら」
余裕…というか、好奇の目で物を言う茜原さん。
その目には、俺の風は実験材料としか見られていないようだ。
「くそっ…!」
このままやられてたまるかと、突き出した拳とは反対側の足で蹴りを試みる。
「おっと」
俺は女子だろうが、躊躇なく顔を狙った。
それなのにその足首も、強力な握力を前に為す術を無くす。
「がぁ…っ!」
「貴方も大したことないのね。残念だわ」
俺が未だに苦痛に顔を歪める中、茜原さんは切り捨てるように言う。
その言葉は即ち・・・俺の終わりを意味していた。
俺の足を持っていた手が離れる。
急に足を離されたことでバランスを崩しそうになるも、その心配は一瞬で消え去った。
急に無重力の中に浮く感覚を得る。
視界が回転し、あらゆる向きが見えた。
直感で、背負い投げをされたのだと察した。
俺が今浮いているのだとするならば、この後に起こるのは・・・衝撃。
そう思った時には、俺の体はコンクリートの床へと思い切り叩き付けられていた。
背中から落ちたとはいえ、並の衝撃では無い。肺の空気が全て口から出ていき、骨ごと臓器が圧迫された。
声にならない苦痛な悲鳴。身体中が痺れ、あらゆる器官が脳からの指令を拒んでいる。
視界が眩み、意識も朦朧とし始めた。
「ぶ…ちょ…」
薄れゆく意識の中、最期に洩らしたのはそんな掠れた言葉だった。
茜原さんの反応は…わから
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