第32話『凶気の科学者』
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前は俺が守ってやるからよ、心配すんな」
部長がこちらを見て笑いかけてくる。その表情には曇りなど無く、清々しいくらいだった。
今までに見たことが無いくらい爽やかな・・・それでいて安心できる笑顔。これを見てしまったら、「あぁ、やっぱり部長なんだ」と思わざるを得ない。カッコいいな──
「にしても、こいつ邪魔だ。ちょっとそこに投げていいかな?」
「俺の感動返して下さい! ぶった斬りますよ!」
「え、お前が斬んの!?」
“こいつ”というのは、部長が抱える副部長の事。顔色は悪く、危険そうな状態であるのは目に見える。
つまり、そんな人を邪険に扱うような今の部長の発言は、俺の感動を一瞬で霧散させ、逆にイラつかせたのは言うまでもない。
そして、さっきまでの部長の評価の全てがドン底になった瞬間でもあった。
「あ〜そう怒んな。どこかで休ませたいって意味だから…」
「素だと思いました」
「俺を何だと思ってんだ」
口で辛辣な言葉を放つ中、俺は心の中では安堵していた。
俺は魔術部。そんな思想が頭をよぎったのだ。
今こうして部長と話していると、どうもそれを感じてしまう。
やっぱりここが、俺の居場所なんだなって…。
「…お楽しみ中悪いけど、いない者扱いされると余計に腹立つわ」
「おいおい、別に忘れちゃいねぇぜ? 俺はただ、後輩の緊張をほぐしていただけだ」
俺が思い耽る中、茜原さんは唐突に呟いた。
それに反応したのは部長。彼はしっかりと相手に言い返す。
それで茜原さんの機嫌が更に悪くなったのは、見て取れてしまったのだが。
「その後輩も、今にその女みたいにしてもいいのよ?」
「まだ首を絞め足りないってか? サディストも大概にしろよ」
そして始まる言葉の戦い。
だが、これをただの口喧嘩と見ることは、俺にはできなかった。
部長は静かに、副部長を理科室の隅に寝かせた。被害が届かないようにする為だろう。
部長の隣に立った時点でわかっていた。
彼が静かに怒りを感じており、俺にはその気持ちを誤魔化そうとしているのを。
この口論の終わりが来るのは、そう遠くない。
「つくづくイラつかせてくれるわね。昔はもうちょっと善人だったと思うけど?」
「過去は過去だ。まぁ俺からしても、お前はもうちょい大人しかった気がするけどよ」
この言葉が、戦いの火蓋が落とされる引き金となったのは、俺にも伝わった。
二人の足が、同時に、強く踏み出される。
部長の拳が茜原さんへと向かう。躊躇は感じられない。性別なんてお構いなしに・・・本気だ。
「遅い」
だがその拳を茜原さんは容易く避ける。
そして仕返しとばかりに、拳が
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