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第五十九話 惑星イオン・ファゼガスを脱出します!
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 ブリュンヒルト及びヴァルキュリアはブラウンシュヴァイク公爵らを乗せたまま、都市惑星イオン・ファゼガスを飛び立ち、大気圏外に全速上昇を続けていた。この時、最高評議会議長やその閣僚らも同乗していたことはあまり知られていない。脱出の際にいっしょくたに地下道に逃げ込んだ彼らは半ば自分たちの意志で、半ば強制的にブリュンヒルトとヴァルキュリアに搭乗したのだ。
 帝国側にすれば、人質としてこの局面を乗り切るために。同盟側にとっては自分たちの失態を自分たちの身をもってカヴァーしたという実績(それは後にしっかりと報道されれば、だが。)を持ちたいからであった。そうでなければ、間違いなくピエール・サン・トゥルーデ「内閣」は帝国からの使節が岐路に立った時、総辞職をしていることだろう。


 フィオーナはブリュンヒルトの艦橋から遠ざかるイオン・ファゼガスの地表を眺めながら、先ほどエア・ポートでかわした会話を思い起こしていた。

* * * * *

出立前のわずかな時間の中、イルーナ、フィオーナ、ティアナ、アリシア、レイン・フェリル、そしてティファニー、アンジェがエア・ポートのブリュンヒルト脇に立ち、話し合いを行ったのだ。
「シャロンの、そしてあなたたちの目的は何かしら?」
この、イルーナの単刀直入かつ直接的な質問から、幕があがったのだった。
「閣下を輔弼して今度こそあなたたちを殺す。これが私の目的です。閣下の目的に関しては今更言うまでもないでしょう。」
アンジェがきっぱりと言った。その口ぶりにはいささかも迷いはない。その隣でティファニーは口を閉ざしている。
「どうしてですか?曲がりなりにも前世においてすべて決着はついたはずです。転生してまで、なぜ、そこまで――。」
「あなたたちは勝者だからよ。」
アンジェがフィオーナをにらみつけた。
「負けたものの気持ちなんて、わかるはずがないでしょう?!あなたたちがあの時死に際の私に向けたのは、憐憫だったわ。理解している瞳ではなかった。ただの憐れみ!憐憫!同情!そんなものを私がもらってうれしいとでも思っているの!?フィオーナ、あなたは転生してからも救いがたい愚か者のようね!」
フィオーナが気圧されたように口を閉ざした。
「フィオを馬鹿にしないで!アンタの方がよっぽどひどいわ!いつまでもうじうじと同じところに固執して!!現実ってものを見ようともしないんだから、アンタの方がよっぽどクソが付くほどの大馬鹿じゃないの!!」
「ティアナ、あなたの言う現実とは何よ?勝者が定義する現実でしょう?そんなものに何の意味があるの?勝者の定義する現実ほど真実から遠ざかるものはないんじゃない?」
アンジェはティアナの叱咤など聞いていないようだった。ただ自分の言いたいことを言おうとティアナに詰め寄っていた。ティアナは動揺を毛ほども
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