298部分:第四十話 揺れる大地その十
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第四十話 揺れる大地その十
「ここで敗れた方が地上を去らなければならんのじゃからな」
「その通りだな。ならばやはり」
「アーレスとその四柱の神々は出て来る」
彼はまた言った。
「間違いなくのう」
「その通りだな。ではその相手はだ」
シオンの言葉がここでさらに強いものになった。
「御前にも頼むかも知れないが」
「ほっほっほ、むしろ向こうから来てくれるかも知れんぞ」
「あちらからか」
「我等の戦力の核は黄金聖闘士じゃ」
聖域といえばやはり黄金聖闘士である。その彼等なくして聖域は語れないと言ってもいい。そこまで重要な戦力となっているのである。
「それならばやはりな」
「御前の方にも来るか」
「その時は相手をしてやるつもりじゃ」
男も素っ気無い調子で述べた。
「神であってものう」
「頼むぞ。おそらく私のところにもだ」
シオンの言葉がまた変わった。
「神の一人が来る。誰かがな」
「おそらくそれはじゃ」
男は鏡の中からシオンを見ながら話した。それは年齢以上に何かしらの深さを感じさせる叡智をたたえた瞳の光を見せていた。
「エリスじゃぞ」
「あの争いの女神がか」
「そうだ。あの女神がやって来る」
彼はシオンに対して告げた。
「間違いなくのう」
「そうだな。私の相手をするならばだ」
シオンはその右手を顎に当てた。そうしてそのうえで語った。
「やはりな。あの女神か」
「そう思うぞ。その時は腹を括ることじゃな」
「私の最後の戦いになるな」
シオンはふと達観したように述べた。
「それがな」
「最後か」
「最後の相手にとって不足はないと言うべきか」
彼はこうも言った。
「神ならばな」
「そうじゃな。わしとてもそれは同じ」
男もまたその言葉を真剣なものにさせた。
「やらせてもらうぞ」
「そしてあの者達がいる」
シオンの脳裏にまた彼等の顔が浮かび上がった。
「彼等がな」
「そうじゃな。あの者達ならばやってくれる」
男もまた彼等のことをその脳裏に思い浮かべた。
「必ずのう」
「私は彼等を信じている」
シオンの声は穏やかなものに戻っていた。
「私の後もな」
「わしもじゃ。それではじゃ」
「今まで悪かったな」
男への言葉が親しげなものになっていた。
「こうして話に駆り出して」
「よいよい。ここはとにかく暇でのう」
飄々とした声で語ってみせてきた。
「こうして話をするのもいいものなのじゃよ」
「そうか」
「そういうことじゃ。ではそれでな」
「うむ。ではまたな」
「話し合おうぞ」
こう話してそのうえで鏡から消えるのであった。シオンはそれを見届けるとやがて玉座から立ち上がり姿を消した。そうして今は休むのであった。
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