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Sword Art Rider-Awakening Clock Up
圏内殺人事件
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の観光組だろう。

心外にも、俺とキリトを見てやや怯えたような顔をする女の子に、代わって前に出たアスナが優しい口調で問いかけた。

「ごめんね、怖い思いしたばかりなのに。あなた、お名前は?」

「は……はい、私、《ヨルコ》といいます」

そのか細い震え声に、俺は確かな聞き覚えがあった。思わず口を挟む。

「最初に悲鳴を上げたのは、君か?」

「は……、はい」

緩くウェーブする濃紺色の髪を揺らして、《ヨルコ》というプレイヤーは頷いた。アバターの外見から推測できる年齢は、17、8歳といったところだ。

髪と同じくダークブルーの、純朴(じゅんぱく)そうな大きい瞳に、不意に薄い涙が浮かんだ。

「私……、私、さっき……殺された人と友達だったんです。今日は、一緒にご飯を食べに来て、でもこの広場ではぐれちゃって……それで……そしたら……」

それ以上は言葉にならないというように、両手で口許を覆う。

震える細い肩を、アスナがそっと押し、教会の内部へと導いた。何列にも並ぶ長椅子の1つに腰を下ろさせ、自分も隣に座る。

俺とキリトはやや離れた箇所に立ち、ヨルコが落ち着くのを待った。友人が残酷な遣り口でPKされる一部(いちぶ)始終(しじゅう)を見たというなら、そのショックは計り知れないものがあるだろう。

アスナが背中をさすっていると、やがてヨルコは泣き止み、消え入りそうな声で「すみません」と言った。

「ううん、いいのよ。いつまでも待つから、落ち着いたら、ゆっくり話して、ね?」

「はい……、も……もう大丈夫、ですから」

案外と気丈でもあるのか、ヨルコはアスナの手から身体を起こし、コクリと頷いた。

「あの人……、名前は《カインズ》っていいます。昔、同じギルドにいたことがあって……。今でも、たまにパーティー組んだり、食事したりしてたんですけど……それで今日も、この街までご飯を食べに来て……」

ギュッと一度眼をつぶってから、震えの声で続ける。

「……でも、あんまり人が多くて、広場で見失っちゃって……周りを見回していたら、いきなり、この教会の窓から、カインズが落ちてきて、宙吊りに……しかも、胸に、槍が……」

「その時、誰か見なかった?」

アスナの問いに、ヨルコは一瞬黙り込んだ。そして、ゆっくりと首を縦に動かした。

「はい……一瞬ですが、カインズの後ろに、誰か立っていたような気がしました」

俺は無意識のうちに両の拳をギュッと握った。

やはり、犯人はあの部屋にいたのか。だとすれば、被害者カインズを窓から突き落とし、俺が部屋に辿り着く前に、衆人環視の中で悠々と脱出してのけたということになる。

そうなると犯人はハイディング機能つきの装備を使ったはずだが、あの手のアイテ
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