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Sword Art Rider-Awakening Clock Up
圏内殺人事件
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あったか!?」

訊かれた瞬間、首を左右に振る。ない、という意味だ。

「なんでだ……」

(うめ)き、キリトはなおも空しく周囲を見回した。数秒後、隣にいたアスナの呟きが小さく聞こえた。

「……ダメ、30秒経った……」

教会の1階に常駐(じょうちゅう)するNPCシスターの横をすり抜け、キリトとアスナは建物の奥にある階段を駆け上がった。

2階は、宿屋の個室に似た4つの小部屋に分かれているが、宿と違いドアロックはできない。通り過ぎた3部屋には、目視(もくし)でも索敵スキルによる探知でも潜んでいるプレイヤーは見つけられなかった。唇を噛み締めつつ、2人は4つ目の、俺が待つ問題の小部屋に足を踏み入れた。

窓際で振り向いた俺は、哀れみな表情1つ見せず、いつも通り冷徹な無表情だ。

だがキリトは無念のあまり、自分が唇を噛み締めてるのがわかる。

普段は厳しく気丈なアスナでさえも、内心ではショックを受けているらしく、眉間(みけん)のあたりが強張るのを隠すことができない。

「教会内には、誰もいなかった」

忍者剣士が報告すると、KoBサブリーダーは即座に問い返してきた。

隠蔽(ハイティング)スキルとか、そのアビリティつきのアイテムで隠れてる可能性は?」

「俺の索敵スキルを無効化するほどのアイテムは、最前線でもドロップされてない。それに教会の入り口にはプレイヤーが隙間なく立っている。隠れてたとしても、出る際に接触で自動看破されるはずだ。この教会には裏口もないし、窓のある部屋といえばここだけだ。出るならこの窓と入り口しかない」

「ん……わかったわ。それよりこれは……」

アスナは頷くと、白いグローブの指で部屋の一画(いっかく)を示した。

そこには、簡素な木製のテーブル設置されていた。動かせない、いわゆる《座標固定オブジェクト》だ。

その(あし)の1本に、やや細い頑丈そうなロープが結ばれている。結ばれている、と言っても実際に手で結ぶわけではない。ロープのポップアップ窓を出し、結束ボタンを押して、更に対象をクリックすることで自動的に固定される仕組みだ。一度結べば、ロープの耐久度を超える荷重をかけるか刃物で斬り付けるまでは切れたり(ほど)けたりすることはない。

黒光りするロープは、空間の2メートルほど横切って、南側の窓から外に垂れている。ここからは見えないが、先端が輪になっていて、そこにあの鎧男が首吊りになっていた、というわけだ。

「う〜ん……」

キリトは唸りながら首を捻った。

「どういうことだ、これは?」

その問いに、俺が答えた。

「……デュエルの相手が、相手の胸に槍を突き刺したうえで、ロープを首に引っ掛けて窓から突き落とした……というのが普通か……」

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