293部分:第四十話 揺れる大地その五
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第四十話 揺れる大地その五
「御前達は一杯は一杯でも腹一杯だな」
「だから一杯なんだけれど」
「だよなあ」
「まあいいが」
モーゼスはここで言葉を変えてきた。
「それもな」
「じゃあそういうことで」
「楽しくやるか」
「俺も飲もう」
そしてこうも言うモーゼスだった。
「今日はな」
「そうそう、楽しくな」
「それで英気を養おうって」
「なあ」
「では。頼むとするか」
モーゼスに匹敵する巨体を見せているアルゲティも言ってきた。しかしその彼等よりもあるデバランはまだ大柄であり実によく目立っていた。
その筋骨隆々の青年を見て。店の親父が声をかけてきた。
「いやあ、あんた」
「何だ?」
「ここの人間じゃないね」
まずはこう彼に言うのだった。
「他の連れの人達も。そうだよな」
「その通りだ」
アルデバランもそれは否定しない。
「俺達は旅で来た」
「だよな。そこまででかい奴はこの街にはいないからな」
それはその巨体でわかったのだった。
「筋肉だって凄いしな。兵隊さんでもそこまででかいのはいないからな」
「兵隊さんね」
「まあ近いかな」
「だよな」
青銅の者達は親父の今の言葉に少しばかり笑った。
「まあそれはいいとしてな」
「親父さん」
「何だい?」
親父は今度は青銅の者達の言葉に応えた。屈託のない明るい笑顔である。それでムスリム特有の口髭が形よく曲がっていた。
「ここでお勧めの料理は何だい?」
「あと酒は」
「お勧めはあれだね」
親父は少し時間を置いてから彼等の言葉に答えた。
「やっぱりね。羊料理だよ」
「やはりそれか」
「そうだ。丸焼きにしたのはどうだい?」
明るい笑顔をそのままに彼等にまた言ってきた。
「実は丁度焼いているのがあるんだよ。こっちで間違えてね」
「間違えてか」
「そうさ。よかったらどうだい?」
アルデバランにも勧めてきた。
「よかったらな。安くしておくよ」
「本当か?」
だがアルゲティはその安くしておくという言葉には疑問符を見せてきた。
「その言葉は」
「おいおい、信じないのかい?」
親父はアルゲティのその言葉には少しばかり悲しそうな顔を作ってみせた。
「それはよくないな。人の好意は信じないとな」
「そもそも店のメニューの値段も知らないからな」
意外と慎重なアルゲティだった。
「それを確かめなければな」
「だよなあ。ぼったくりとかなあ」
「されたら洒落にならないからな」
「なあ」
青銅の者達もアルゲティの言葉を聞いて話した。
「それで親父」
「わかってるさ。ほら」
渋々ながら丁度側の空いているテーブルにあったそのメニューをアルゲティに渡すのだった。アラビア語であったがそれでもアルゲテ
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