第百十七話
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ちらのステージかららしく、予想通りにセブンがマイクを取っていた。
『ひとまずお疲れ様! だけど、まだまだ終わらないわ! でもまだ準備がかかりそうだから、前座に今日だけのスペシャルライブ!』
その瞬間、俺が準備していることこそが前座であるかに錯覚する、シャムロックたちから山を轟かすような叫びが大地を震わせた。どこからそんな声が出ているのかと思えば、つい隣にも発生源があったことに気づく。
「し、仕方ないじゃん……お姉ちゃんの前にファンなの!」
「はいはい」
その発生源ことレインは、ジッと見ていたこちらの視線に気づいたらしく。顔を少々赤らめながら、わざとらしく咳払いをしてみせた……とはいえ、目は輝いてステージの方を見ていたが。
『今日はスペシャルライブらしく、スペシャルゲストが来ているの! ねぇ――』
深呼吸、一拍。
『――レイン!』
「ふぇっ!?」
目を輝かせていた姿を一変させ、レインが素っ頓狂な声を上げていた。ざわざわと観客となったプレイヤーたちが騒ぎ出すと、レインは反射的に《隠蔽》スキルを使い、近くにあった柱の影に隠れてしまう。
「おい、逃げないんじゃなかったのか」
「だ、だってその……いきなりで! 心の準備が!」
レインの――恐らくはSAO時代から――鍛え上げられた《隠蔽》スキルは、百戦錬磨のVRプレイヤーにも通用するものだったが、流石に目の前で消えられれば位置も分かる。一段落ついた作業の手を止めると、柱の影にいるだろう彼女にツッコミを入れてみた。
「確かにさっき、いつか一緒のステージで歌いたいね、みたいな話はしたけど、早い! 早いってば!」
「諦めろ、なんかそういうムードだから」
気づけば何やらムードに乗せられたプレイヤーたちからも、レインの名を呼ぶコールが発せられていた。拍手も含まれてリズムを取った、本格的なライブのコールのような声援に。
「ひっ……!」
レインは割と本気な悲鳴をあげていた。一見すると、何もないところから発せられる悲鳴とは、かなり不気味かつホラー映画のようなシチュエーションだったものの。酷くうろたえるレインの姿が容易に想像出来るため、まるで恐怖は感じることはなかった。
「そもそも一緒に歌おうって、レイン、セブン……七色の歌、歌えるのか?」
「振り付けまで完璧!」
「じゃあ完璧じゃないか」
「…………分かったわよ! 行けばいいんでしょ!」
そして柱の陰から、器用にも胸を張る気配と怖がる気配が感じられ、最終的にはヤケクソ気味な言葉が放たれた。いつもの余裕ぶった話しぶりは欠片も感じられず、まだ戸惑った気配は続いていた。というか《隠蔽》スキルを使ったままだった。
「でもこんな盛り上
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